「この材料にドハマりした」と、さいたま市の建築塗装業・永山工業の永山亮社長。ハマったのは、メーコーの高意匠性塗材「アートシリーズ」だ。魅惑的な表情を変幻自在に生み出す様子に、「これまでとは次元の違う仕事に踏み出せる」と奮い立った。塗装・防水を中心に施工会社として円熟期を迎えている同社が次に照準を定めたのは、特殊塗装のフィールドだ。
永山工業は昨年8月に社屋を移転・新装した。塗装から防水、土木、建設と業容が広がり、売上も拡大。施工会社として円熟期に入り、次なる成長を見据えた拠点としての新社屋だ。
移転先の老朽化した建物を自分たちの手でリノベーションし、オフィスや作業場や倉庫を造設、職人のリラクゼーションルームも設えた。そして目を引くのがスタイリッシュな室内空間だ。プランニングを担当したのは営業企画部長の大島秀二さんと、永山社長の長男で取締役の永山真さん。
「社員の気分が上がる空間にしたかったのと、若い人材の確保も視野に入れ、カッコいいと思ってもらえるようなオフィスを目指しました」と担当した大島さん。デザイン性に優れた壁紙やタイルカーペット、建具、照明などをコーディネートしてインテリアを演出。工事会社らしからぬ洗練された空間ができあがっていった。
そのとき、永山社長の中にひとつの思いが湧き上がった。「新社屋のシンボルになり、塗装会社のプライドをも表現できる塗装をここに加えたい」との思いだ。それを叶える材料はないかと探しているときに出会ったのが、メーコーの高意匠性塗材「アートシリーズ」。仕入先の塗料販売店・神山塗料(東京・国分寺市)から紹介された。
アートシリーズのサンプル板を見たとき、「これだ!」と直感した永山社長。「パテのイメージしかなかったメーコーさんがこんな材料を持っていた驚きと、先行投資やライセンスなどの縛りもなくオープンに扱える気安さ、そして何より魅惑的な表情を変幻自在に生み出せる意匠性に圧倒された」と即断した。
メーコーの「アートシリーズ」は、パテ専業メーカーの同社が、次の成長領域として注力している高意匠性塗材の製品群。アンティコスタッコの本場イタリアから導入した技術を元に、大理石調や古壁調、デザインスタッコなど多彩なテクスチャーをラインアップ。「日塗工の見本帳で色出しできるカラーバリエーションと、イマジネーションを刺激する多彩な表情が持ち味」(同社営業部長・梅澤輝氏)と自信を持つ材料だ。
永山工業では、社屋新装のシンボルとしてアートシリーズの中からクリスタルウエイブの「GEMMA(ジェンマ)」を選択、オフィスのファサード全面にあしらった。
施工を任されたのは同社の塗装職人・細渕幹雄さんだ。「アート的なセンスがいちばんありそうだから」(大島さん)と指名された。
パテ処理した石膏ボードの下地に専用のアンダー材を塗り、乾燥後に「GEMMA」で模様づけ。今回選んだのは「黒」と「シルバー」の組み合わせだ。最初に黒を叩き、その上にシルバーを叩いて重ねる。ヌメ皮を使ってねじるように叩くのがコツだ。初めての施工ということもあり、メーコーも技術指導員を派遣したものの「こちらで教え込むまでもなく、思った以上に早くマスターされた」(メーコーの梅澤部長)と細渕さんはセンスを発揮。
「黒とシルバーのバランスに気を配る点と、パターンの調子が崩れないようリズムをキープすることが大事。初めての割にはうまくいったと思う」と手応えを示す細渕さん。黒とシルバーの輝きが波のように重なり高級感を漂わせる壁に、「新社屋のシンボルに納まった」と永山社長も満足気だ。
「今回メーコーさんの材料を扱ってみて、可能性を大いに感じた」と永山社長。「こうしたアートな塗装を物にできれば、独自のサービスとして差別化でき、新たなビジネスの展望が開ける」と積極的に打って出たい考えだ。
既に目算はある。沖縄だ。インバウンド需要、そして大型テーマパーク「ジャングリア」の今夏のオープンを控え、リゾートホテルの建設ラッシュに沸く沖縄。同社は、その沖縄にビジネスのルートを持っており、「ホテル建設の関係者に今回の話をしたところ、『すぐにでも試してみたい』と反応は上々」とし、早期に動き出しそうだ。
「社員に恵まれ、会社が成長し経営も安定。次に踏み出すタイミングで今回の話が持ち上がった。特殊塗装のフィールドでビジネスを成功させ、更なる高みを目指したい」(永山社長)とアクセルを踏み込む。
HOME建築物 / インフラケーススタディ 施工会社の新領域、「アート+塗装」に鉱脈発見