大阪市の塗料ディーラー・タカラ塗料(大野一馬社長)が販売を始めた内装仕上材がヒットしそうな予感だ。商品名は「モルクラフト」。店舗内装などで人気のマイクロセメント系仕上材をDIYでも扱えるようにした商品だが、関心を寄せているのはむしろプロだ。設計士や左官職人、デザイン塗装を得意とするペインターなど、こだわりのプロが熱い視線を注いでいる。
タカラ塗料の「モルクラフト」は、樹脂と細かな石や砂を混ぜ合わせたモルタル系の左官材。近年、店舗設計などで多く見かけるマイクロセメントと呼ばれるカテゴリーの内装仕上材だ。
モルタルテイストのクールな表情に加え、水まわりで使えるのが大きな特徴。常に水のかかるようなキッチンカウンターや洗面台、シャワーブースなどの他、熱や汚れにも強いのでテーブルやカウンタートップにも使える。
こうした仕上材はヨーロッパでは広く普及している。国内では早くに導入された「モールテックス」というベルギー製の材料が特に有名だ。洗練されたモルタル調のテイストと水まわりOKの使いやすさが受け、飲食、フラワー、アパレル、雑貨などオシャレな店のインテリアで多用され、店舗設計のトレンドになっている。
塗料のB to Cビジネスを展開する同社も人気の「モールテックス」に関心があったが、クローズド品のため塗料販売店は扱えず、施工の難度が高いためDIYには難しそうだ。そこで、懇意にしている輸入元と海外の素材や組成物を取り寄せて研究開発し、タカラ塗料オリジナルのマイクロセメント「モルクラフト」として商品化、昨年から販売を始めた。
ワークショップで記者も体験
先日、タカラ塗料で開かれた「モルクラフト」のワークショップに参加した。当初は取材だけの予定だったが、当日に急遽キャンセルが出、「記者さんもやります?」と大野社長に誘ってもらい、飛び入りで参加させてもらった。
定員6名のこの日のワークショップに来ていたのは、設計士2人と左官職人さん2人、プロのペインターと飛び入り参加した自分の計6名。
ワークショップ自体は昨年の12月から始め、この日で3回目。1万円近い参加費用ながら毎回すぐに定員になる人気ぶりで、「一般の人も来られますが、今日のようにプロの方たちの参加が多いですね」と大野社長。
その理由は、「モルクラフト」への期待だ。参加するプロの人たちは設計デザインでの指定や、現場で施工経験があるなどベルギー製の「モールテックス」のことをよく知っている。と同時に、「施工の難度が高く、思っていたようなテクスチャーが出ない」など、その弱点も知っている。だから、タカラ塗料の「モルクラフト」の施工性や仕上がりの良さが本物かどうか確かめに来ているのだ。
ワークショップは、A3サイズの板にモルクラフトの主材を2度塗りし、最後に専用トップコートで仕上げる工程。モルクラフトの主要なポイントを体験できる作業だ。
1回目は、柔らかいペースト状のモルクラフト主材を、コテで薄く塗りつけてテクスチャーをつける作業。コテの動かし方でいろんな表情が楽しめ、やっていて面白い。記者もコテ作業は初めてながら、柄や模様には正解はないのでそれなりにできた(と思う)。
そして乾燥。時間が限られているのでストーブの近くに立てかけたものの、わずか20~30分で次の工程に移れる状態に。「モールテックスより圧倒的に乾燥が早い」(参加の左官職人さん)と作業性の違いを実感していたようだ。
2回目の塗り作業は、1回目でできた凹凸を埋めるように均すのが目的。そして次に来るのが、このワークショップのハイライト「磨き」だ。
2回目の塗りが終わって10分ほど乾燥させたあと、コテで表面に磨きをかける。そうすることで表面のキメが細かく詰まり、材料に含まれた雲母が輝いて魅惑的な表情が現れてくる。モルタル調のクールなテイストとランダムな陰影、見る角度によって多彩な表情を見せるモルクラフトの醍醐味に引き込まれる作業だ。
そして最後に、油の飛び散りや熱い鍋の直置き、水分の長時間放置もOKの専用トップコートをローラーで塗って作業は終了。濃密な2時間があっという間に過ぎた。
参加した人たちからは、「施工性や仕上がり感を確認できたので、進行中の店舗設計で使いたい」「扱いづらいというマイクロセメントへのイメージが変わった」「壁の仕上げ、家具や什器などいろんなところに使え、提案の幅が広がる」など好評で、プロ好みのマイクロセメントとして広がりそうだ。
刷毛とローラーで車をDIY塗装するカルチャーを広め、百貨店(髙島屋)に常設の塗料専門店を構えるなどユニークな取り組みが光るタカラ塗料。塗料販売店発の内装仕上材「モルクラフト」も要注目だ。
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