神東塗料株の公開買付実施 筆頭株主・住友化学が応諾、上場は維持

大日本塗料は2月6日、神東塗料に対し、連結子会社化を前提とする同社株式の公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。同日、神東塗料の筆頭株主である住友化学がTOBに応じる姿勢を表明。併せて神東塗料は、大日本塗料を割当予定先とする第三者割当増資による新株発行を行う。TOBが成立すれば大日本塗料の持ち株比率は50.10%となり、神東塗料は大日本塗料の子会社化となる。なお、神東塗料の上場は維持するとしている。


かつて大手塗料メーカーの一角を担った神東塗料が事実上、大日本塗料の傘下に入ることが決まった。

2月6日、大日本塗料、神東塗料、住友化学の3社が今回のTOBの実施に関する経緯と内容について説明。そこには抜本的構造改革を進める住友化学の事情が関与していることが分かる。

2000年代以降、住友化学は基礎化学品、エネルギー・機能材料、情報電子化学、健康・農業関連、医薬品からなる5事業部門をエンジンとする成長モデルを構築してきたが、2023年度末には創業以来最大となる3,118億円の最終赤字を計上。多角化経営による経営資源の分散や技術のコモディティ化の加速、中国の大型プラントの新増設といった内外的要因を課題に「5事業部門による成長モデルは限界を迎えている」(住友化学)と経営再建に着手した。

具体的には2024年度中に約5,000億円(後に6,000億円に上方修正)のキャッシュを創出する「短期集中業績改善策」を策定。事業再構築、在庫削減、投資厳選、資産売却・余資活用を推進。今回の神東塗料株の売却も、ノンコア事業と政策保有株式の売却を積極化する「短期集中業績改善策」の一環と位置づける。

神東塗料においては、コロナ禍による需要減退に加え、2022年4月に公表した同社製品の認証規格及び公的規格に対する不適切行為により2022年度から2024年度まで3期連続の赤字を計上。今期に入り3四半期連続で営業黒字を計上し、回復基調を見せていたが「(神東塗料の)今後の成長のためには、塗料事業における提携により、販売機会の拡大やコスト削減、並びに新規の設備投資による生産性向上が見込める大日本塗料をベストオーナーとし、競争力強化を図ることが最善」(住友化学)とし、TBO応募に至った経緯を説明する。1938年4月に資本・技術提携を締結して以降、87年に及ぶ関係にあったが、TOB成立を以って両者の関係が幕を閉じる。

今回のスキームとしては、TOBを応諾した住友化学と同社子会社16社が所有する神東塗料株45.16%(増資後41.09%)を大日本塗料が取得。更に神東塗料は大日本塗料を割当先とする第三者割当増資を行うことで、大日本塗料は計50.10%の過半数を確保することになる。

今回のTOBにおける取引価額は、筆頭株主である住友化学(子会社保有株含む)との取引を前提に市場株価よりディスカウントした1株90円に設定。第三者割当増資は1株当たりの発行価額127円とし、成立した際の大日本塗料の取得価額は約16.5億円となる。

生産連携、電着事業のシナジー期待

今回、住友化学の神東株の売却意向に対し、大日本塗料は複数企業が参画した入札プロセスを経てTOB実施に至った。

神東塗料の子会社化を決断した理由について大日本塗料は「2029年度に連結売上高1,000億円、連結営業利益100億円を目標に掲げる『ビジョン2029』の達成に資すると考えた」と説明。両社の今期通期見通しを単純合算すると連結売上高925億円、連結営業利益49億5,000万円となり、①塗料事業提携による販売機会の増大とコスト削減②新規設備投資による生産性向上のシナジーで上積みを図る意向だ。

特に神東塗料の電着事業においては、「電着事業が新たに加わることで自動車メーカーとの関係が深まると期待している」(大日本塗料)とコメント。神東塗料においても主要顧客の新規需要に対する生産性向上策を検討しており、TOB成立による第三者割当増資で得た資金を元に、総額約3.8億円の設備投資を実施する計画がある。

今後は両社でシナジーを具体化し、実践するための事業提携コミッティを設置する予定。共同購買を含む調達の最適化、生産拠点の最適化、人財育成・活用などを議論するとしている。 

神東塗料が保有する関連会社や特約店への対応について、大日本塗料より以下の回答を得た。
Q.神東塗料関連会社の対応について
A. 当社(大日本塗料)としては、神東塗料がJVパートナーとの関係維持を望み、それが当社の利益に資するのであれば、その判断を尊重する。ただし今回の神東塗料の主要株主変更により、提携先との協議は必要になると認識している。出資比率を50.1%にとどめている理由の一端に海外JVパートナーとの関係維持といった観点もある。

Q. 神東塗料特約店について
A. 神東塗料の特約店や当社の特約店からもご意見を伺いつつ、エンドユーザーをはじめステークホルダーの皆様にとって最適な形となるよう、これから具体的な検討を進める。



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