戸建てなど住宅の塗り替え需要が低迷する中、工事量の減少を利益率の向上でカバーする方向性が示されている。塗装店による屋根カバー施工の内製化だ。木造住宅塗装リフォーム協会(木塗協、代表理事・古畑秀幸氏)は、塗装店が内製化できる工法としてアスファルトシングルによる屋根カバー工法を推進。施主の満足度アップと塗装店の利益率向上を両立する工法として普及を狙う。

戸建てやアパートなど低層住宅の塗り替え工事において"塗れない屋根"が増えている。アスベスト使用禁止以降の化粧スレート屋根材に見られる"割れ"の多発、一部メーカー品のような"層間剥離"を起こしている屋根材など塗装では対応できない現場だ。

こうした場合、元請け塗装店の多くが採用しているのが金属屋根によるカバー工法。塗装では再生できない屋根を金属屋根で覆って納める工法だが、板金などの専門技術を要するため外注に頼らざるを得ない。このため、客出し単価のアップと自社の利益率低下、工期の長期化などが避けられなかった。

こうした課題を克服する工法として木塗協が推進しているのが、アスファルトシングルによる屋根カバー工法だ。

最大の特長は、「アスファルトシングルはハサミやカッターで切断できるので高度な板金技術を要せず、塗装店自身で屋根カバー工事を内製化できる点。それにより40~50%の粗利が確保できる」(古畑氏)と、外注への丸投げに比べて利益率が大きく向上。

しかも「金属屋根カバーに比べて客出しの単価も2割ほど安く設定でき、施主にも喜ばれる。外注業者とのスケジュール調整も不要なので、工期の長期化を避けられるメリットもある」(同)と、住宅塗り替え工事に伴う屋根カバー工法としての優位性を明示する。

木塗協が屋根カバー工法で採用しているのは、米国・オーウェンスコーニング社製のアスファルトシングル屋根材「オークリッジスーパー」。アスファルトシングルの屋根材が大半を占める米国の住宅市場で90年の歴史を持ち、4分の1の市場シェアを誇る主力メーカー。グラスファイバーの芯材にアスファルトを含侵させた屋根材の耐久性は高く、メーカーによる40年の長期保証、最大風速50m/秒で最大15年の耐風保証が担保されている。

「金属屋根によるカバーではいずれ塗装によるメンテナンスが必要になるが、オークリッジスーパーはメンテナンスフリーが謳えるのでランニングコストの優位性も明確。また、棟板金の上を共材で仕上げられるので、アメリカの住宅の屋根のようにデザイン性も圧倒的に良くなる」と、施主への訴求度に秀でている点を強調。「屋根カバー工法の中でもアスファルトシングルのシェアは1割もないので、これから伸びるブルーオーシャンの工法」と、塗装店の新たな事業領域として提唱する。

木塗協は、塗装業など住宅外装リフォームを主体とした150社ほどの事業者で構成し、さまざまな研鑽を積んでいる。オークリッジスーパーによる屋根カバー工法の実地研修についても昨年5月から継続しており、多くの会員が参加。

既に実際の現場で同工法を展開している会員からは、「金属カバー工法との差別化で優位性を打ち出せ、受注力がアップ」「価格でもデザイン性でもお客様に喜ばれる」「数件の現場を経験すれば内製化への自信もつく」などのコメントが寄せられており、塗装リフォーム事業に貢献する屋根カバー工法としての展開を強める。