ホンダモビリティ南関東(本社:東京都、代表取締役社長:高橋宗一郎氏)は、ホンダカーズ東京中央、ホンダカーズ横浜、ホンダカーズ埼玉、ホンダカーズ千葉が経営統合して昨年4月に誕生した。新体制となった同社は2030年ビジョンを掲げ、鈑金塗装における環境革新と次世代品質を目指す。サービス部門の鈴木課長に2030年ビジョン及び今後の方向性について聞いた。

――2030年ビジョンとは。
「従業員の健康被害低減に向けてオール水性塗料・有機則フリーを導入することで、2030年までに安全、高品質、持続可能な自動車補修技術体制の確立を目指すというものです。昨年経営統合をしましたが、これまでBSC(ボディサービスセンター)の4センター(立川西、足立小台、日高、白井)では、それぞれ若干方向性や手法が異なっていたので、昨年1年間かけて各工場長が集まり大きなルールや手法の統一化を進めてきました。塗料は、BSC白井だけがベースのみ水性塗料を使用していたので、他のセンターでも水性に切り替える方針を決めました。その際、現状の設備で対応可能か、どのような不具合が生じる可能性があるかなどを塗料メーカーや現場スタッフと協議しながら取り組んでいます」

――どのような計画ですか。
「水性塗料未導入の3つのBSCが一気に切り替えると生産量が落ちてしまう恐れがあったので、塗料メーカーの協力も受けて、今年の4月、8月、11月の順にまずはベースコートで水性塗料の導入を進めている段階です」

――水性塗料は必須ですか。
「そう考えています。水性塗料に比べて溶剤塗料を使用している工場では、臭いが非常に気になります。従業員の安心、安全を第一に考える必要があり、健康リスクを低減することが大事です。今年の4月からまずBSC日高のベースコートを水性塗料に切り替え、8月に立川西も切り替えが完了しています。11月に足立小台で進めていく導入計画です。塗料メーカーのサポートを受け、事前研修を実施し、スタッフが水性塗料を体感し意見交換しながら本格導入へと進めています。併用すると使い慣れたものを使ってしまうので、水性塗料を入れたら溶剤塗料はすべて撤去しています」

――水性塗料の導入の際のコスト負担についての考えは。
「塗装ブースは既存設備をそのまま使用しており、ガンは塗料メーカー推奨のモデルと担当者のスプレーガンの2丁を1人につき用意しました。あとは洗浄機とヒーターを導入しています。塗料の入れ替えと水性塗料用保温ラック導入だけで数百万円ほどで、その他も合わせると金額的な負担は小さくないですが、従業員の安心安全、健康被害の低減が大事だと考えています。特性が溶剤塗料とは大きく異なるので慣れる時間は必要だと考えています」

――計画性が重要ですね。
「慣れるには1センターで3カ月は必要で、一気に全センターで切り替えると処理能力に問題が生じるため、他の拠点と協力しながら全体の入庫台数は確保しています。すぐに今までと同じ台数の処理は求めていません。生産量はある程度落としても構わないと伝えているので、現場の負担を減らしています。段階的に上げていきます」

――2030年までのスケジュールは。
「3年かけて塗装はオール水性に切り替える計画です。今年がベースコート、来年はクリヤーの水性化に取り組みます。BSC白井では水性ベースコートをもともと採用していたので、既にクリヤーのテストを行っています。そして、2027年はオール水性に向けて進めていく予定です。その後はコーキングやシーラーなども可能な限り環境対応型に移行し、2030年までにオール水性と有機則フリーを目指しています」

――現在進めている効率化施策はありますか。
「当社は鈑金塗装部門だけでなく、新車センターを持っているのですが、そこで新車のデータを取れるのが当社の強みです。そこで調色コンピュータシステムを活用したオンラインデータマージの採用を計画しています。入ってくる新車の塗色のデータをすべて収集しており、そのデータをオンライン上で、各センターの調色に反映させていきます。調色作業の工数削減ができるため、作業効率の向上及びコスト削減に寄与できると考えています。今はデータ収集を始めたばかりで、鈑金塗装での有効性を確認できたら、将来的には協力工場様にデータを開示することも想定しています」

――協力工場に対しても同じ材料の使用を促すのですか。
「強要することはできません。水性塗料を導入すると大きな投資になりますから。我々の活動に対してメリットを感じる協力工場様に対しては喜んで協力させてもらいたいと思っています。ホンダの車を守るという意味でも、協力工場様との連携は必要です」

――ありがとうございました。