「色って、視覚を通じたコミュニケーションツールなんだと思います。明るい気持ちにしたり、元気づけたり、豊かな感情を引き出したり。言葉を越えて人の心に働きかけるのが色のチカラ」。そう語るのは、アーティストのバルサミコヤスさん(写真)だ。「私の絵でたくさんの人にハッピーをお届けしたい」と創作を続ける彼女の作品は、見る人の心に響く『いいいろ(色)』であふれている。
小学生の時の写生会で「色」に目覚めた。お寺の木の壁を同級生たちが茶色で塗っている中、「どうしてもその色で塗りたくなって」と、1人だけ緑色でお寺を写生した。「色がちがう」とまわりに疑問を持たれたが、「個性的でいいね」と先生が褒めてくれた。まだ言葉にはできなかったけれど、「芸術のエッセンスのようなもの」に触れた瞬間だった。「絵描きさんになりたい」と思っていた保育園のころからの夢が後押しされた。
絵を描く仕事に就くため、テレビの美術スタッフの専門学校に進んだ。そこでもやはり、『君の色づかいは個性的だね。君は君のままで行きなさい』と先生にアドバイスされた。「色で表現すること」がますます楽しくなった。
「そうなりたいと思い続け、言い続ければ、いつか必ずかなう」というのが信条だ。創作活動でつながった人との関係を大切にし、自分を売り込むことで「絵を描く仕事」への道を切り拓いてきた。人気歌手のCDジャケットのデザインも、出身地である千葉県山武市からのアート制作の依頼も、中学校の美術資料集の表紙を飾った仕事も、ネパールやカンボジアで子供たちとワークショップを楽しんだ活動も「いつかやる」と思い続け、まわりの人たちに言い続けてきたことで機会が訪れ、実現した。
日本ペイントとのコラボレーションも、人とのつながりから生まれた縁だ。壁画制作などで使う塗料を買っていた地元の塗料販売店からの紹介で、日本ペイントのCSR活動「HAPPY PAINT PROJECT」のアーティストとしてオファーがあり参画。ホスピタルアートの壁画制作などでコラボした。
色の可能性を追求するバルサミコヤスさんにとって、塗料は大切な相棒だ。「ベタで塗りつぶして下地を覆うことも、水で薄めて水彩画のようなタッチにすることも、欲しい色をその場でつくる(調色)こともできる塗料は、私の創作活動になくてはならない存在」と頼りにしている。
「例えば、部屋の壁のどこかをマスキングテープで小さく囲ってペイントをし、テープをはがすと立派なアートになる。誰もが手軽にアートを楽しめるのが塗料だと思う。アートに上手い、下手はない。自分の感情がそのときどうだったか、どう感じたかだから」と楽しみ方のアイデアも伝えてくれる。
「色」は「感情」だと言う。目には見えない感情を、視覚的に表す手段が色だと。色は感情だから、正解も不正解も、ルールや規則もないけれど、「描いている人がハッピーじゃないと、見る人に伝わるはずがない」と、色を楽しみ尽くすことを自身のルールにしている。知識としての「色」よりも、人の感情に働きかける「色」を大切にしているので、「自慢じゃないけど、色彩検定の試験には落ちちゃいました」と屈託なく笑う。
そんな彼女に最近、ユニークな仕事が舞い込んだ。カラオケボックスの部屋の中に壁画を描く仕事だ。東京・東大和市のレジャー施設「BIGBOX東大和」のカラオケボックスのリニューアルオープンに合わせ、運営する西武レクリエーションから依頼があった。
「以前、バルサミコヤスさんにワークショップをやってもらったことがあり、その時の絵のタッチを見て今回の壁画の仕事をお願いしました」とBIGBOX東大和の田中和菜主任。子供向けのスポーツやレジャー施設の運営をメインにしているBIGBOXでは、カラオケボックスのリニューアルオープンに際して「親子で楽しめる部屋」を設けることを企画。その演出をバルサミコヤスさんに託した。
ポップでキュートな動物たち、子供目線でデフォルメした虹や星や太陽の絵が壁や天井に広がり、そして部屋に足を踏み入れた瞬間に非日常の世界にワープする圧倒的な色づかい。「家族での利用やママ友と子供たちのグループなど、みんなの弾ける笑顔を思い浮かべながら創作しました」とバルサミコヤスさん。この部屋のネーミングは、もちろん「バルサミコヤスルーム」。「色」でハッピーを届ける芸術家の名前だ。
バルサミコヤス:2012年から芸術家として活動を開始。「あなたを励ますような作品を描き続けていく」ことをポリシーにしている。見る人の心にダイレクトに響く色づかいは秀逸だ。21年から千葉県山武市観光協会観光大使。壁画製作やワークショップなどの依頼も広く受付けている。barusamikoyasu@gmail.com



