10月30日(木)~11月9日(日)の11日間にわたり、東京ビッグサイトにて、日本自動車工業会の主催でJapan Mobility Show 2025が開催された。本誌では、国内自動車メーカーが世界に先駆けて公開したコンセプトモデルのボディカラーに着目して取材を実施した。
全体の傾向として「高級感や上質感を印象付けるため、過剰な光沢を抑えたマット調やハーフマット調を採用した」との声を何度も耳にした。また、光の当たり具合により近い色相で微妙にカラーチェンジする技術を取り入れているケースも散見された。
一方、マット調は全体の印象が平坦になりがちなため、その対策に腐心したとのコメントも聞かれた。マット調の上品さと、形の美しさを際立たせる適度な光沢感を両立させるため、光輝顔料の使い方を工夫したという。
■スズキ
スズキは、軽乗用BEV(Battery Electric Vehicle:バッテリー式電気自動車)のコンセプトモデル「Vision e-Sky(ビジョン e-スカイ)」を参考出品した。
日々の通勤や買い物、休日の気軽な遠出といった用途向け。2026年度内の量産化を目指している。開発テーマは「ユニーク・スマート・ポジティブ」で、前向きで明るい気持ちになることを意識したデザインとなっている。
ボディカラーは、ブルーを基調にガラスフレークで適度な光沢感を付与。光の当たり方でパープル、ブルー、グリーンに変化するカラーチェンジも取り入れられている。
■SUBARU
SUBARUはBEVのコンセプトモデル「Performance-E STI concept(パフォーマンスE STIコンセプト)」を披露した。空力性能を追求しつつ、ダイナミックで立体感豊かな力強い造形の実現がデザインのポイント。
ボディカラーは、同社を象徴するカラーとされるWR BLUEをベースに開発された「E WR BLUE」。担当者は「WR BLUEに比べマット調となっており高級感の演出に寄与している」と解説した。
■トヨタ
「あなた目掛けて」のものづくりが、いずれ皆のためのものづくりに繋がっていく。そんな思いを込めたコンセプト「TO YOU」を打ち出したトヨタ。コンセプトの象徴として、かつての定番ファミリーカーの進化形として「COROLLA CONCEPT(カローラ コンセプト)」を発表した。
ボディカラーは「ウォーターフリーズ」と呼称する新色を採用。担当者によると「日本の都市に馴染むことを意識した」とのこと。ソリッドライクな印象を与える一方、光輝顔料の工夫による滑らかなハイライトの実現で特徴的な形状も浮かび上がらせた。
室内空間の最大化を図るため6輪仕様とした「LEXUS LS CONCEPT(レクサスLSコンセプト)」も公開。自然の温かみを感じさせる色合いをベースに、微細な光輝顔料を緻密に配向することで洗練されたメタリック感を付与している。「フラットでありながら光を拾ってくれる意匠になっている」と担当者。
同社の最上位ブランドからの提案として「CENTURY COUPE CONCEPT
(センチュリー クーペ コンセプト)」も展示。ボディカラーに採用された緋色は、初代センチュリーからエンブレムに用いられてきた鳳凰、不死鳥、太陽フレアのイメージから着想されたもの。独自の重ね塗りに技法よって鮮烈なインパクトを実現しているという。
■日産自動車
日産自動車のイヴァン・エスピノーサ社長は国内市場で成果を出すことの重要性を強調。ビジネスを牽引するフラッグシップモデルとして新型「ELGRAND(エルグランド)」をお披露目した。
開発テーマとして「Timeless Japanese Futurism」を掲げ、「日本らしさ」を意匠に取り入れている。ボディカラーには、富士山の黎明(夜明け)の一瞬を切り取った自然美を表現した「FUJI DAWN(フジ ドーン)」と、古来より高貴さや格式の高さの象徴だった紫に着目した「至極(シゴク)」の2トーンを採用。「シックな印象と、深みや奥深さを感じさせることを意識した配色」と担当者。
「FUJI DAWN」は、明るいところでは赤み、暗いところでは青みが感じられるという。「至極」は漆塗りの質感を参考に、深みのある紫と控えめな光沢で上質感を表現した。
■マツダ
マツダの毛籠勝弘社長は、2035年の目標を「走るほどにCO2を減らす未来」と説明。その実現の鍵として、カーボンニュートラル燃料を用いた走行と、MAZDA MOBILE CARBON CAPTUREと呼ばれる排気からのCO2回収技術がある。これらを搭載したビジョンモデルとして公開されたのが「MAZDA VISION X-COUPE(ビジョン クロスクーペ)」だ。
ボディカラーはメタリック感と透明感を感じさせる「グラスシルバー」。ソリッドのライトグレーをベースに、粒径が非常に微細なアルミ層を緻密に配向した薄膜を組み合わせて、青みがかったハーフメッキ調の質感を形成した。「メタリックであるがウォーム感も感じさせる」意匠を目指したという。
■三菱自動車工業
三菱自動車工業はPHEV SUVのコンセプトカー「MITSUBISHI ELEVANCE Concept(エレバンス コンセプト)』を発表した。
ボディカラーは「テラコッタ」。「焼いた土」を意味するイタリア語で、素焼きの焼き物や赤褐色などを意味する。「砂漠や冒険を想起させる色として採用された」と担当者。
プレミアム感や柔らかさの表現を狙いとしたハーフマット調をベースとしつつ、デザインやシルエットを強調する光沢感も付与した。「ゴツゴツしたゴールドパールでメタリック感を出しつつ、黄色味を帯びて見えるカラーチェンジ技術も使われている」。
■ヤマハ発動機
ヤマハ発動機は、人間とモビリティのコミュニケーションの在り方を探索する開発の最新成果として「MOTOROiD:Λ(モトロイド ラムダ)」を公開した。
コンピュータ上の仮想環境でAIがシミュレーションと学習を行い、学習結果を現実世界に適用する技術を活用し、寝た状態からの起き上がりや、前進、旋回といった動きを自ら習得していく機能を持つ。
塗装に独自技術を適用した。「製品デザインにおけるCMFG(Color、Material、Finish、Graphic)にT(Time)を加え、経時変化が付加価値に変わるとのメッセージを組み込んだ」と担当者。
具体的には、ボディの黒い塗装部分について、下からアルミ層/青加工アルマイト層/黒塗料層という多層構造を採用した。表面の黒が剥げると下地の青が露出し、黒と青のコントラストが浮かび上がる仕掛けで、同じものが2つとない意匠となる。
発想の土台として「使い込むことが必ずしも劣化につながらないのならば、買い替えや交換の時期を延ばすことにつながる。これもサステナビリティの1つの考え方では」との思いがあったと明かした。


