業界企業による事業の多角化では初めてかもしれない。通所介護、いわゆる要介護のお年寄りのデイサービス事業を、塗料商社大手の板通(いたつう=本社・栃木県、板橋信行社長)が始めた。新たに取得した土地に介護施設を建設、今月1日に「板通デイサービスさくらの里」がオープンした▲30代の社員を中心とした新規プロジェクト開発チームが、さまざまな案を揉む中で最終的に行き着いたのがデイサービス事業だったという。進取の気性に富む社風とは言え、本業の工業用塗料の販売とはまったく畑違いの分野。そこに「GO」サインを出した経営陣の柔軟性も小気味いい▲施設には近隣の人たちに無料開放するスペースも設けた。趣味や習い事、健康チェックそして足湯など「毎日でも寄ってみたくなる」楽しげなコンテンツを用意。施設に通うお年寄りと近隣の人たちとの間にコミュニケーションが生まれる、地域に開かれたデイサービスが特徴だ▲工業用ユーザーとのB to Bビジネスを基幹に据え、アジアを中心にグローバル化も進めている同社だからこそそこに気づいたのかもしれない。高齢化や地域活性化といった生活者レベルの問題に向き合って得られるノウハウや会社全体で共有できる精神性が、やがては自社のビジネスの幹を太くする最大のシナジーだと(K)