「ホワイト企業」という言葉まで飛び出してきた。もちろん「ブラック企業」の対語としてである。就活まっただ中の学生たちの間でも「黒か白か」とまるでオセロゲームのような言葉が飛び交っている。今やブラックかホワイトかが、企業を選ぶ際の最優先事項のようだ▲大企業を中心に業績の好転が伝えられているが、一方で過労死自殺など過重労働にまつわるニュースも後を絶たない。一見、白に見えていても簡単に黒にひっくり返される「隠れブラック」は思いのほか多い。サービス残業など働く側の無理に乗じた好業績ではないか、点検が必要だ▲と、そんなことを考えている最中に「お客様は神様です」というフレーズが頭に浮かんだ。高度成長期、「お客様の言う事は絶対」と、景気の熱に浮かされた日本人の精神に染み込んだスローガン▲その言葉の前では労使ともに無理をするのが当たり前の風潮がいつの間にかすり込まれていった。無理することは同時に無駄や無茶をも生み、その積み重ねが、働き方をめぐる今日の歪に表れているように思う▲本紙恒例の夏季特集号で「働き方」をめぐる業界企業の取り組みについて取材を進めている。とても抽象的な表現だが、「お客様と顧客」、「無理と負荷」の間にある微妙なニュアンスの違いを多くの人が意識し始めている(K)