住宅を工場で生産している理由について「天候や職人の技量に左右されない環境だから」と公言している大手ハウスメーカーのテレビコマーシャルを見かけた。天候はともかく、コントロールできない負の要素に「職人の技量」までも挙げて主張する工場生産の正当性に引っ掛かっている▲世界でも類を見ない工業化住宅先進国として発達してきた日本。件のCMではないが、工場生産でこそ実現する「品質」で消費者を納得させてきた経緯がある。ところが、品質が高いはずの日本の住宅の寿命は先進諸国のそれに比べて極端に短い皮肉な結果に終わっている。価値観を摺りこまれた消費者も、やり玉にあげられた職人の技量もいい面の皮である▲と、テレビCMへの違和感からコラムを書き始めてみたものの、住宅の工業化と短寿命を結び付けるにはやはり無理がある。普通に考えて、雨のかからない工場でロボットが設計どおりに作った方が品質的には優れているに違いない。従って、日本の住宅の短寿命は、品質とは別のところに理由がありそうだ▲家具でも焼き物でも職人が手間ひまかけて造り上げたものには、長く大事に使おうという気持ちが自然に湧いてくる。空き家の増大、中古住宅の流通、リフォームの低迷など住宅の諸問題を解くカギもそこにあるような気がしてならない(K)