「こんな映画を見たいのでは?」と、人々が無意識のうちに求めているストーリーを提供するのがヒット作を生み出す秘訣だという。映画「男はつらいよ」でおなじみの山田洋次監督の話である△塗料卸のシモダ(本社・東京、下田裕治社長)が取引先に向けて毎年開いている講演会に、今年は山田監督が講師で招かれた。「寅さんと私」と題した話の中で自身の映画づくりのスタイルにも言及。多くの人の心の中に眠る共感のツボを探り、そこに刺さる映画をつくることがヒットを生み出すコツとの話は物づくりとの共通点を連想させた△iPhoneにしても、その昔のウォークマンにしても、「こんなモノが欲しかった」と消費者がまだ気づいていないニーズを引き出したことが大ヒットのポイントと言われる。潜在していたニーズを顕在化させられるカタルシスが消費刺激のツボと言えそうだ△逆の見方をすると、既に顕在化しているニーズに対して製品を開発してもそこにはサプライズもなければワクワク感もない。創造的な消費は生まれず、競争の行き着く先は価格だけという淋しい結果になってしまう△「他社品に比べて耐久性が○○年伸びます」などと塗料メーカーのプレゼンで聞かれる常套句。他社品を持ち出した時点で既に顕在需要以外の何物でもない。不毛の製品開発が続く(K)