「外壁を塗り替えてから自宅を眺めるのが楽しみになりました」と、塗装を済ませた客から声が寄せられた。以来、そこで使用した多彩模様塗料を定番にしている塗装業者がいる。「塗膜の中にあるカラーフレークとマイカが太陽の色や傾きを受けていろんな表情を演出。朝、昼、夕方で場面が変わる外観のドラマを楽しんでもらっています」とどこか自慢気だ。塗り替え工事にストーリー性を持たせたことで金銭判断を超える付加価値をもたらした▲窯業サイディングに大きく水をあけられているように、建築仕上げにおける湿式から乾式工法への流れがますます進んでいる。新築はおろか、今後はリフォームでも「塗り替え」から「張り替え」への流れが十分予期できる。半製品かつ現場施工の品質管理の難しさを嫌う元請サイドの思惑として、当然考えておかなければならない。ただ、そこに対する焦りがこの業界から漂ってこないのが不思議だ。フッ素だ、無機だ、価格だと、身内同士の競争にばかりに明け暮れている▲冒頭の話題では、現場で調合するフレークやマイカの量、職人の吹き方によって得られた壁の表情が客の感動を引き出した。半製品であり現場施工であるからこそ得られるドラマである。業界に必要なのはストーリーづくり。ハンデは強みに変えられる(K)