「デザインペイント元年にしたい」。東京塗料会館のペイントリノベーションを監修したヨザン弥江子さんの言葉だ。先々週の本欄で触れたように、ヨザンさんの高度なデザインと装飾塗装の世界観を日本塗装工業会・技能委員会の有志の職人が仕上げたことを受けて出た言葉。デザインと職人の技能が融合した、塗装の新たなステージへの期待が込められている▲先月末に愛知県体育館で開かれた全国建築塗装技能競技大会。最大の見せ場である「自由課題」では今年からモールディングなど立体材料の使用を許可した。出場選手の表現力の幅を広げるのが狙いだ。スチレンフォームやアクリル素材などの立体物の他、料理用のラップや自作のステンシルなどさまざまなツールを使って独創的な世界観を表現、いつにも増して熱いデザインバトルが繰り広げられた▲合理化、効率化、生産性が重んじられる流れの中で、それまでの塗装の領域がフィルムやシートにどんどん置き換わっている。住宅の室内壁や建材は言うに及ばず看板や電車の外板など枚挙に暇がない。反面で、それらの淡白で軽薄な世界が広がっているからこそ情緒的なものを求める声も高まっている▲デザインもコツコツと積み上げられた職人の技能も、人の心に響く魅力に溢れている。ただ強みを伸ばしていけばいい(K)