さあ慌ただしくなってきた。塗料と運賃、ダブル値上げの春になりそうである。ナフサの高止まり、酸化チタンの世界的な逼迫、物流業者の超強気な姿勢などなど、値上げ包囲網はいつにも増してきつい▲こうしたときによく使われるのが「価格転嫁」という言葉。仕入れの上昇分を販売価格にスライドする意味合いで使われることが多いが、少し気を遣った方が良さそうだ▲「転嫁」を改めて辞書で調べてみると「罪や責任などを他になすりつけること」とある。なすりつけられる方はたまったものではないが、値上げはそれほどネガティブな印象が伴うということだろう▲先日、ある塗装会社の幹部が「塗料メーカーはもっと堂々と値上げをしてほしい」と話しているのを聞いた。これも単調に聞くと、材料価格の上昇を施工単価に"転嫁"しやすくなるからと取れるが本意はそこではない、"堂々と"にある。いい仕事をしている自負がある立場としては、塗料メーカーにもっと堂々と社会や市場に主張をしてほしいとのジレンマ。なにか自信なさげに映るのだ▲業界人が「ミネラルウォーターより安い」と揶揄することもある塗料。タマゴやモヤシじゃあるまいし、物価の優等生を気取っていても仕方がない。転嫁ではなく、堂々と値上げを主張できる自信と誇りを磨かなければ(K)