野手の手前で不規則に跳ねてキャッチできなかったボールをイレギュラーバウンドという。昔、野球少年だった身としては「イレギュラー」と聞くと、そのことが頭に浮かぶ。練習不足を棚に上げるわけではないが、予想し得ない不規則への対応は難しい。きまってボールを取り損ねていた▲「今や、イレギュラーがレギュラーになってしまったのではないか」。先日、ある経営者に取材をしていてそんな話が出てきた。豪雨、台風、地震、酷暑など異常気象や自然災害が連続している状況を指し、「通常ではない状況が常態化している」と続ける。当然、塗料の販売にも大きく影響、「今後は、イレギュラーを前提に経営計画を練り直す必要がある」と表情は厳しい▲塗料販売より更に困っているのは塗装の現場。屋外での仕事が多い建築塗装はもちろん、屋内作業の工業塗装や自動車補修の現場でもイレギュラーな気象の影響は大きい。昨日と今日で極端に乱高下する温湿度などが品質にも影響、作業環境の管理は年々難しくなっている▲経営環境に加えて自然環境のイレギュラーも激しくなってきた昨今、不測の事態への想像力と瞬発力は、人も企業もますます重要性を帯びてくる。イレギュラーを後逸してエラーがつかないのは野球だけ。ビジネスの世界ではアウトになりかねない(K)