先日、あるペンキ屋さんを訪ねたときのこと。取材が終わって事務所を出たところ、「ここも、あそこも、向こうの家も」と自社で塗り替えた物件を指してくれた。両隣の家はもちろん、2軒先、3軒先、隣のブロック、その先のブロックと同社の仕事の実例が町中に広がっている。その案内を受けながら、ペンキ屋さんの可能性に改めて気づかされた▲住宅の外壁の塗装は、施工事例をそこに展示しているようなもの。外部なので誰の目にも留まりやすいのが強みだ。「どの業者に頼めばいいか分からない」といった悩みが上位を占めるリフォーム市場にあって、施工の実例ほど説得力のあるものはない。「いい仕事をしてほしい」という施主の本質的な心理に対して、経年後でもしっかりとした塗膜で美しい佇まいを見せている実例がそこにあれば、最良の判断材料になる▲仕事が更なる仕事を生むといった意味で、施工事例を基点に広がる塗装は地域密着ビジネスの典型かもしれない。もちろん、それに適う施工力が大前提なのは言うまでもないが▲塗り替えることが地域で慣習となり、家々の外壁が整えばまちが美しくなる。美しくなればまちへの愛着が高まり、活気が生まれる。人も地域も高齢化する中、塗装でまちを元気にする。ペンキ屋さんの新たな役割が見えてきた(K)