「上意下達の組織ではこれから立ち行かなくなる」。将来の展望を聞く本紙新年号の取材で業界経営者が次々に口にした言葉だ。経営幹部が固めた方針、計画を、中間管理職を通じて現場に実行を求めていくスタイルに限界がきたことを示唆してのことか。計画未達の繰り返しは、逆に社内のモチベーションの低下を招くとの危惧がある。また過度な計画・指示は、次々と明るみになる企業の不正とも無縁ではない。「一億総〇〇」といった言いようも懐かしさを感じる。今やライフスタイルは多様化し、職業観や労働観の多様化を生み出している。目前の業績を上げるだけでは、社内のマインドを結集しきれない経営者の苦悩が読み取れる▲そこにきての「働き方改革」である。来年度から従業員に最低5日の有給休暇の取得を義務付けた法律が施行される。全企業を対象とした施策に「本当にそんなことができるのか」と危機感を露わにする一方で、会社の基礎力が改めて問われている。採用力とも連動するため大企業への優遇策とも読み取れるが、事態は深刻だ。中小零細企業の弱みを突く施策は、日本の社会基盤を根底から変える。達成感や充実感を提供しようとする企業の「働き方改革」も生活の糧を度外視してはできないこと。余裕があるのかないのか、分からなくなってきた(R)