「3年前にベトナムから来てもらった技能実習生がこの春帰国しました」と寂しげな表情で話す塗装会社の経営者。外国人技能実習制度で初めて雇用した実習生。現場の職人も最初は戸惑ったが、「真剣度が違う」彼らは仕事の覚えも早く、すぐに頼れる存在になり、大切な仲間になった。母国に帰るとき、「またこの会社に戻ってきたいと言ってくれた」と顔を綻ばせる▲「自社の職人の態度が変わってきた」と話すのは別の経営者だ。こちらも今年から技能実習生を雇用した。現場は安全第一。言葉の壁があるからこそしっかり伝えようとする行動が職人のコミュニケーション能力を高め、会社全体の連帯感も強まったと口にする▲外国人労働者の受け入れを拡大する新たな在留資格「特定技能」の運用が4月から始まった。建設業や介護など14業種で、今後5年間で35万人ほどの受け入れが見込まれているが、国が使うこの"受け入れ"という言葉がどうにも引っ掛かる▲特定技能も、技能実習制度にしても日本の労働力不足を補う"埋め合わせ"的な上からの目線を「受け入れ」という言葉に感じてしまう。単なる埋め合わせではなく、上の事例のように職場を変えるパワーさえ秘めている。大きなリスクを負って海を渡ってきたその人たちが輝ける会社こそ輝くに違いない(K)