先日、地方の塗装店で経営者に聞いた話。休日に車で街を走っていると、昨年から雇っているベトナム人技能研修生を見かけた。サンダル履きで自転車を漕ぎ、何やら釣竿らしきものを担いでいる▲車の窓を開けて「おーい、何してんだぁ、釣りでも行くのか?」と呼びかけると、「そう、ツリ」と研修生。「でもこの辺、海ないじゃん?」「ちがう、カワいきます」「川?釣りができるような川があったっけ?」「あります。○○のところ」「え、○○!?あそこって用水路じゃん!」「カワじゃない?」「・・・まっ、いいや、気をつけて行きな!」と声を掛け通り過ぎた▲次の日、職場に顔を出すと日本人の職人と研修生たちが楽しそうに話をしている。どうやら昨日釣った魚の話題のようだ。聞くところによると、件の用水路で鯉を釣り上げ、宿舎に持ち帰って調理し、日本の職人たちを招いてご馳走。それが美味しかったと話が盛り上がっている▲「彼らと接していると、たくましさというか、我々にはない生きる力みたいなものをひしひしと感じますね。そうした素朴な魅力が日本の職人たちも惹きつけ、会社の中がすごく良いムードになっている」と経営者。「用水路で釣った鯉の料理は勘弁してほしいですが(笑)」と目を細める。ダイバーシティーがここでも息づいている(K)