先日訪問した企業で"青緑問題"の話になった。本当は緑色なのに、青信号と呼ぶような青と緑を混用した慣習のことである。この欄で何度も色の話題に触れておきながら、実は"青緑問題"のことを知らなかった。で、さっそくググってみた▲なるほど青信号のことを英語では「Green Light」と呼び、国際的には信号の色は「緑・赤・黄」とされている。ではなぜ日本だけ?読者には釈迦に説法で恐縮だが、大雑把にまとめると次のようなことらしい▲平安以前の古代日本では、色を表す言葉は「白」「黒」「赤」「青」の4つしかなく、有彩色のうち寒色系の色を「青」でくくって表現していた、その名残りということだ。青菜、青虫、青りんご、究極は「青々とした緑」というように、明らかに緑色でありながら「青」を使うことに違和感のない慣習が息づいている▲考えてみると、江戸後期に生まれた「四十八茶百鼠」にも共通するものが見えてくる。庶民の贅沢を咎めた奢侈禁止令で着物の色を茶色と鼠色(と藍色)に限定された際、オシャレをしたい庶民たちは実に粋で多彩な「茶」と「鼠」の色を編み出した▲「青」「茶」「鼠」といった単体の色名の中に豊饒な色のニュアンスを共有し、微妙な色の違いを見極める日本人の感性。グローバル時代への強みにできないだろうか(K)