毎年、高校生(新卒)が塗装職人を目指してその会社に入社する。彼らの志望動機は揃って、「いつか東京タワーを塗りたい!」。昭和のシンボリックな建物が平成の若い人たちも魅了していると知り、昭和世代の1人として嬉しくなった▲先日、東京タワーの塗り替えを一手に担っている平岩塗装(東京・大田区)を訪ねた。昨年終了した11回目の塗り替え工事から塗装仕様が変更し、塗り替えのサイクルが5年から7年に延長。その取材に伺ったのだが、東京タワーの塗装にまつわる話は興味が尽きない▲足場や養生の特殊性、細心の安全対策、背負い式タンクの開発など東京タワーならではの工夫の数々。中でも、職人の心や技量の成長を促す、タワーが持つ人材教育力の話は奥深い▲日本中のだれもが知り、多くの人の目に触れ眺められる東京タワー。そのシンボリックな建物に自分の仕事を刻むことの誇りや遣り甲斐は職人としての心を震わせるのだろう。「当社の仕事に関わる職人は皆、東京タワーの仕事がしたい」(平岩敏史社長)▲ただし、簡単には現場に立てない。気力、体力、技能が充実し、親方がGOを出して初めて立てる晴れ舞台でもある。その明確な指標が職人を育て、若い人を惹きつけて会社に正の回転をもたらす。7年後に向けた修行が始まっている(K)