子供の頃、商店街の歳末大売り出しといえば「福引」である。ハンドルをガラガラ回すと六角形の箱から出てくる抽選玉。赤玉、黄玉、はずれの白玉。ドキドキしながら回すハンドル、ポトリと落ちる白い玉。いつも末等の賞品を握って、すごすごと帰った光景も懐かしい▲先日、取材の帰りに街灯に貼られていた「歳末福引セール」のチラシが目に入った。近頃の福引きの賞品はどんなものだろうと字を追うと、「特賞アルコール消毒液(大)250本」「1等アルコール消毒液(小)1000本」「2等お菓子詰め合わせ1250本」「3等マスク1枚2500本」...ご時世である▲今年は業界もコロナ禍に揺れた。巣ごもり特需のあった家庭用を除きすべての塗料分野で市況が急落、大幅な売上ダウンを強いられた。秋から回復傾向にあるものの、三たび感染が広がり警戒が解けない▲パンデミックという事態に安全と経済活動の両立を迫られた。テレワークなど多様な働き方への対応、移動や対面が制約されICTやデジタル環境も急ピッチで整えた。コロナを逆手に業界の近代化が進んだ感もある▲福引はその昔、年始に2人で餅を引っ張り合い、取り分の多さでその年の「禍福」を占う正月の座興でもあったそうだ。餅は引っ張り合わないけどコロナで「禍」はもう十分。来年は是非「福」を(K)