「全国にペンキ屋さんが5万5,000社(建設業登録)。仮に1社当たり10万円だとすると年間で55億円にも達する」と警鐘を鳴らすのは福岡県の建築塗装業・フクモト工業の福本満壽男社長だ。塗装業者が廃棄する塗料の産廃費用を試算した額である。1社当たり10万円は少なく見積もってのもの。「実際にはもっと膨大な塗料が廃棄されている」と見る▲同社はこのほど、IT化支援企業と共同で建築塗装業に特化した塗料の在庫管理アプリを開発した。現場で余った塗料で乱雑化する倉庫、在庫管理が不備なために多発する重複発注、使われない塗料は増え続け年間で数十万円の産廃費用が発生、「資産であるはずの在庫がお荷物でしかなく、利益も圧迫していた」と振り返る▲在庫管理アプリは同社をガラリと変えた。手元のスマホでリアルな在庫状況を確認でき重複発注をなくしたばかりか、在庫品の有効利用で満足度の高いサービスも提供できるようになった。塗料の廃棄費用はほぼゼロになり、「何よりも職人のコスト意識を変えたことが大きい」と評価する▲環境保全が待ったなしの時代に廃塗料を出し続けていいのか。「つくる側(メーカー)の責任もさることながら、我々使う側の責任も質さなければならない」とキッパリ。小さな塗装店が進める大きな意義のDXである(K)