値上げラッシュが続いている。塗料メーカーの多くが価格改定を打ち出し、夏から秋にかけて値上げを実施、ピークを迎えている。コロナ下における原材料価格や物流費の高騰など要因は分かっているものの、「これまでの値上げとは様相が異なる」と市場は警戒を強める▲ひとつは、「交渉の余地が全くないこと」と塗料販売店の経営者。これまでの値上げでは商品間でバランスを取るなどある程度融通が利いたが、「今回は一律に一斉値上げ。過去にない強硬姿勢」と戸惑いを隠さない▲「新単価の提示が遅い」(同)ことも今回の特徴という。売価改定への煩雑なプロセスを考えると「極力早い段階で仕入単価を把握したいが、実施日の1カ月前を切っても提示されないケースがある」と言及。「久しぶりの本格的な値上げに、メーカーの内部でさえ混乱が生じているのでは」と訝しむ▲そして今回の値上げで市場が警戒を強めているのは、その背景にある"物不足"への不安だ。既に一部メーカーの看板商品が供給困難をきたしているように、「材料が手に入らない」という事態も現実味を帯びてきた▲コロナ禍で勃発したグローバルな物の争奪戦の中、デフレと円安で他の国に買い負けをしている日本の姿が随所で露呈しており、塗料原材料も例外ではない。警戒は続く(K)