ある業界関係者がおもしろい調査を行った。全国の塗装工事で設計やゼネコンなどに提出する「塗板見本(塗装サンプル)」の数である。塗料メーカー各社へのヒアリングなどを元に集計したところ、その数はなんと年間に160万枚!業界で当たり前のように行われているサービスも、こんな数字で表れると少し考えさせられる▲塗装の色決めに際して、「部位ごとに数色を各ツヤで、現場事務所と設計者と施主に用意して」なんて注文に応えていると、1つの現場で瞬く間に大量の塗板見本が費やされる。しかも決定した色以外の見本板は廃棄、決定色も現場が終わればほぼ棄てられる。環境ファーストの時代に、塗膜に覆われた160万枚ものゴミを発生させている実態。慣習的に"無償"で行われてきた塗板見本のサービスも、見直す必要がありそうだ▲発注側にとっては"ただ"だから何枚もの塗装サンプルをつい要請し、結果的にゴミを増やしてしまう。それだけでなく、その安易な向き合い方が色選びのスキルを低下させているかもしれない。提供側にとっても、やはり"ただ"だからゴミになっても無頓着でいられる▲「ただほど怖いものはない」と言われるように、"ただ"の盲点が現れている一例とも言えよう。環境への配慮を共通項に、"有償化"もまた正義になる(K)