数年前、フランスでキャタピラーの粉体塗装ラインを取材した。建設機械の重量物パーツを粉体塗装の2コートで仕上げる現場の迫力に圧倒された▲ニュージーランドの塗装会社を取材したときには、7mの建材を縦吊りで粉体塗装する塗装設備を見ることができた。それほどの長尺物を垂直で粉体塗装する設備は日本ではまず見ることができないので、非常に興味をそそられた▲海外の塗装工場や塗料関連企業を取材すると、多彩な用途で粉体塗装が広く浸透していることを体感的に感じられる。そして、必然的に日本ではなぜそこまで広がっていないのかとの疑問に至る▲理由は単純なものではないはずだ。ただ根本にあるのは歴史の違いだと感じる。日本は工業製品の塗装として溶剤系の歩みが長いため、溶剤塗装の仕上がり外観は高度化し、受注・製造・納入といったビジネススタイルが確立している▲環境対策や自動化といった次世代の課題に対して粉体塗装に期待する声が増している。普及のためには、まずその特性を知ってもらうことが重要ではないか。顧客や設計、デザイナーなど仕様を決めるポジションに粉体塗装の理解が深まれば変化の流れが起きる可能性は高まる▲その地に訪問することで知ることは多い。海外視察ができる状況にはいつなるだろうか(T)