塗装・左官・フィルム、マルチな人材を輩出

全国の職業能力開発校(旧:職業訓練校)の中で唯一、「カラーコーディネート塗装科」という訓練科を持つ徳島県立南部テクノスクール(同県阿南市)。建築、自動車補修、工業の各塗装技能に加え、左官からラッピングフィルムまで幅広い仕上技能を学び、それら「塗る」と「貼る」に共通するスキルとして「カラーコーディネート」の習得も組み込む。若年者の技能職離れが進む中、職業能力開発校としての新たな在り方に挑んでいる。


徳島県立南部テクノスクールは、「塗装」の技能を学べる数少ない職業能力開発校だ。かつては多くの職業能力開発校に"塗装科"が存在したものの、今や全国でも数えるほどに減少しているという。

家具産業の衰退による木工塗装需要の低迷や自動車整備に鈑金塗装が組み込まれるなど種々の要因があるものの、「若年者の技能職離れで入校者が大きく減っており、それが根本的な要因」(同校カラーコーディネート塗装科担任・光延紀一郎氏)と、職業能力開発校の置かれた環境を説明する。

同様の問題を抱えていた同校では、それまでの「塗装技術科」の在り方を見直し、より幅広い技能やスキルを学べる「カラーコーディネート塗装科」へと再編、令和3年にスタートした。

再編したカラーコーディネート塗装科では、建築、自動車補修、工業の各種塗装技能に加え、左官によるコテ技能の訓練、更にラッピングフィルムもカリキュラムに組み込み、「塗る」から「貼る」までに至る幅広い仕上技能を学ぶ。そして、それら「塗る」と「貼る」仕事に共通して求められる「カラーコーディネート」のスキルも習得。全国でも類を見ない学科となった。

若年者の入校が減少する中、「多様な技能を学ぶことで職業の選択肢が増える」(光延氏)といった就業支援の側面と、「幅広い技能を身につけた"多能工"になることが、人材不足社会の中で優位に働く」(同)との考えが、同科再編の背景にあった。

テクノロジーが進んでも技能職は残る

カラーコーディネート塗装科の1学期は午前中が座学、午後が実技のスケジュール。午前中の座学では、塗料の知識や各種塗装法の基礎から応用、色彩検定や危険物取扱主任者資格の取得を目指した勉強なども行われる。

午後の実技では各種塗装の養生の仕方や、パテ作業では石膏ボードの目地処理や鈑金塗装のポリパテなどの下地処理、刷毛・ローラー・スプレーのテクニック、現場で必要な図面の引き方などを習う。

そして、1学期の最後には、金属塗装技能検定の3級を受験。素地調整、脱脂、パテ、マスキング、スプレー塗装のスキルが網羅された同検定の在校中の取得を目指す。

3週間の夏休みが明けた2学期は、実技の授業がみっちりだ。

例えば、自動車補修塗装の実技実習では、損傷したフェンダーパネルやドアパネルの叩き出し鈑金や引き出し鈑金に始まり、調色から上塗りまでの各工程を習得する。ブロック塗装はA社、隣接する取り合いのボカシ塗装にはB社といったように、異なるメーカー同士の色合わせで調色技能も磨く。「現場に出たときをイメージした、より実践的な訓練」(光延氏)だ。

建築塗装の実習では、校内の建物の改修工事を通じて実際の仕事を学ぶ。足場の架設に始まり高圧洗浄、老朽化や爆裂箇所の補修、コーキング処理、下塗りから上塗りまでの一連の塗装作業を実際の現場作業で学ぶ。その際、足場の組み立てやフルハーネスの安全衛生特別教育などを事前に校内で実施し、修了証も発行される。

そして2学期は、コテ作業を中心とした左官の授業も目玉のひとつだ。ここでは、「現代の名工」の称号を持つ卓越技能者が特別講師となり、120時間に及ぶ授業を実施。「塗装、塗り床、タイルなどにも横断的に使えるスキル」(光延氏)としてコテ作業を重視、その訓練に時間を割く。

2学期には更に、スタイロフォームとパテによる造形やエアブラシでの彩色などアーティスティックなカリキュラムも設定。そして3学期に入ってラッピングフィルムを本格的に学ぶ。

ラッピングフィルムの技能を身につけることで、サイン・広告関係や自動車架装など職業選択の幅が広がるだけでなく、「脱炭素社会の中で、自動車塗装もいずれはフィルムに置き換わっていくことが想定され、ラッピングフィルムの技能者のポテンシャルが高まる」とし、学科再編時に組み込んだ。 

こうして1年間、1,410時間に及ぶ同科の課程が修了、それぞれの道へ進むことになる。

同科担任の光延紀一郎氏は、「社会でAIやロボット化などのテクノロジーがいくら進んでも、人の手でしかできない仕事は必ず残る」とし、そうした仕事の魅力ややりがいを伝えるのも自身や自校の役割と認識する。

この4月に新年度を迎えた同校のカラーコーディネート塗装科には、8名の入校者があった。このうち6名が高校と中学を卒業したばかりの若年の入校者で、学科再編の効果が徐々に現れてきているようだ。マルチな技能を備える人材の輩出へ、同校とカラーコーディネート塗装科の挑戦は続く。



実物件で塗装を訓練
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コテ作業の習得を重視
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これからの時代に必須のスキルを学ぶ
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