ポリプロピレングリコール生産でタッグ、LLP設立

三井化学と三洋化成工業は、5月15日、両社折半出資による有限責任事業組合(LLP)として「ジャパンポリオール」を設立した。ポリプロピレングリコール(PPG)の生産について、国内での生産性向上や将来的な供給安定性の確保など共通課題の解決が目的。5月22日に記者会見を開き、両社のPPG生産の概要やLLPの設立経緯、今後の戦略について説明を行った。


ポリプロピレングリコール(PPG)は、ポリウレタン樹脂の主原料の1つで、使用用途は自動車部品、家具・寝具、断熱建材、塗料・接着剤など多岐にわたる。

世界市場で需要拡大が続くPPGは、日本国内では次世代自動車の普及やスマートホーム化、各用途における環境対応などの市場変化を受け、高機能、高付加価値のポリウレタン樹脂製品の需要伸長が見込まれている。

一方で、汎用品の需要は減少傾向。また、国内外の市場において海外メーカーとの競争環境は厳しさを増している状況にある。

PPGについては、三洋化成工業が昨年、三井化学は今年に入りPPG関連製品の値上げを発表している。他の化学メーカーも1~2年前から原料費や物流費、製造コスト増加から価格改定を発表。多くの化学メーカーが「自助的な努力で吸収できる水準を超えている」状況となっている。

5月22日に行われた記者会見ではまず、両社のPPGにおける事業戦略について紹介。三井化学は高機能PPGなどの開発を重視している他、PPG、MDIなどトータルで幅広い製品、技術を擁している。生産はアジアを中心に展開。国内では徳山工場、名古屋工場でPPGの生産を行っている。ポリウレタン事業戦略では、2021年に韓国SKCとJVを解散後、同年にMDIの生産能力を増強、ボラティリティ低減による再構築を推進している。

一方、三洋化成工業は今年から新中期経営計画を策定し、PPGの生産販売を行うウレタン事業の構造改革を掲げ、収益改善を行っていくことを発表している。現在名古屋、衣浦、川崎工場の3製造拠点で展開。1960年に初のPPG国産化に成功し、基盤事業として長年同社を支えてきたものの、近年では設備の老朽化や生産の効率化などの課題があり、その解決手段を模索している。

両社の共通する主な課題は生産性の向上と合理化で、認識をともにするパートナーと連携することが必要との考えで一致。2021年から協業についての話し合いを開始し、この度、PPGの生産協力による合理化や原料調達協力、更なる連携の可能性を検討するためのLLPを設立した。両社のPPG事業における継続的な安定供給と収益確保の両立を図っていく意向を示す。

三洋化成工業の樋口章憲社長は「最も重要なのは、責任を持ってお客様に製品を供給していくこと。LLPでお互いに必要なものを補完し合うことで、PPG製品を安定的に生産・供給していくことが狙い」とLLP設立の意義を説明した。

LLPは会社設立とは違い、株主ではなく組合員で重要な決定ができることや設立費用も抑えられる特長がある。「2社で自由に意見交換しながら、具体的な施策を決めていきたい」と自由闊達な交流から連携の深化を促す考えだ。

来月以降にはスワップや製造受委託などの両社製造拠点の相互活用による生産合理化や酸化プロピレンなど主な原材料の共同交渉による調達合理化を行っていく予定。LLPを設立後も生産、販売などは各社で継続運用するとしている。

両社の国内でのPPGのシェアは三洋化成工業3割、三井化学3割ほどとなっており、高いシェアを持つ企業同士の連携で製品の安定供給や生産合理化につなげていく。

◇ジャパンポリオール概要△事務所所在地 :東京都中央区八重洲二丁目2番1号(三井化学本社内)△出資金:100万円△出資比率:三井化学50%、三洋化成50%△設立日:2023年5月15日△職務執行責任者:三井化学-ベーシック&グリーンマテリアルズ事業本部ポリウレタン事業部長、三洋化成-ウレタン材料事業本部長△取組内容:三井化学及び三洋化成のPPG生産における運用協力



㊧三洋化成工業・樋口章憲社長 ㊨三井化学・橋本修社長
㊧三洋化成工業・樋口章憲社長 ㊨三井化学・橋本修社長
LLPの概要
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