中小塗料メーカーに連携の機運
関塗工・大塗協初の共同事業開催

中小塗料メーカーの連携が活発化しそうだ。関東塗料工業組合(寺内裕雅理事長)と大阪塗料工業協同組合(水谷成彦理事長)が企業間連携を視野に進めている「東西交流会」は11月5日、初の共同事業として神奈川県寒川町の日本化工塗料(塩田淳社長)の工場見学会を実施した。組合員各社に喫緊の生産性向上の課題に対して同業他社の取り組み事例を学んだ。同交流会ではこれまでの親睦を中心とした交流活動から一歩踏み込み、中小メーカーの共通の課題をテーマに連携を探る。


国内経済の縮小と競争激化、人材不足、後継者難、働き方改革や生産性の向上など中小企業の経営環境が厳しさを増す中、多くの産業で倒産、廃業やM&Aによる中小企業の統廃合が進んでいる。塗料産業に関してもそれらの課題に加え、塗料の国内需要の縮小、原材料費の高騰、大手塗料メーカーとの格差拡大(競争力低下)、環境対応の高度化など中小塗料メーカーを取り巻く環境は一層困難さを増している。

そうした中、各社の経営課題克服へ向けた中小塗料メーカー同士の連携を探る動きが始まった。

中小塗料メーカーを中心とした同業者組合の「関東塗料工業組合」(=関塗工、会員会社47社)と「大阪塗料工業協同組合」(=大塗協、同33社)は2017年に交流活動の「東西交流会」を発足。同年に関塗工と大塗協のそれぞれの理事長に就任した寺内裕雅氏(ミカサペイント社長)と水谷成彦氏(水谷ペイント社長)が「地域や分野を超え、同業による企業間連携の重要性で一致」(寺内氏)し、交流活動をスタートさせた。以来、懇親を中心に交流を重ねて関係性を強化。今回、親睦以上の初の交流事業として日本化工塗料の工場見学会を開催した。

見学会の冒頭であいさつを行った寺内理事長は、「昨年、関塗工の委員会活動で日本化工塗料さんの工場見学を行ったところ、たいへん多くの方にご参加いただき好評だったことからぜひ交流会事業でも実施したいと企画、(日本化工塗料の)塩田社長に快く引き受けていただき開催の運びとなりました。各社とも生産性の向上が喫緊の課題となる中、今回の工場見学が皆様の事業活動において少しでもお役に立てれば幸いです」と経緯と目的を説明。当日は関塗工と大塗協のそれぞれの組合員会社の代表者や生産部門の責任者など30名ほどが参加、同業他社の工場見学という希少な経験をした。

キラリと光るアイデアに感心

今回工場見学会が行われた日本化工塗料は、自動車部品用やフィルム用のUV硬化塗料など自社開発の機能性塗料の製造販売の他、関西ペイントグループの一員として同社製品の受託製造を行っている。

始めに日本化工塗料の塩田淳社長が同社の概要や、今年で創業134年、会社創立102年になる歴史などを説明。創業者の堀田瑞松氏が開発した漆ベースの錆止め塗料「堀田錆止塗料及ビ其塗法」が日本の特許第1号であったことなど興味深いエピソードを披露した。

続く工場見学では、製造設備の見学に加え、同社の行動指針である『従来と今の"あたりまえ"を否定してみよう!』に基づいた職場改善活動の成果や3現KY(現場、現物、現実の危険予知)の演練などを見ることができた。

同社では"あたりまえを否定しよう"をスローガンに職場改善、生産改善のための提案活動を、全社員で行っている。その中でキラリと光るアイデアや提案を「光りもの」と称し、現場に導入して活用、その一端を紹介した。

例えば、ロートからペットボトル容器に塗料を充填する際のアイデア「チャッキリ」は、たこ焼きづくりにヒントを得て内製した治具。液体を定量で充填しやすいチャッキリをロートに装着することで、ペットボトル充填作業の生産性が飛躍的に高まった。

また、塗料の仕込み作業で原料を投入する際、袋が巻き込まれないようにタンクに取り付けるカゴは、自転車のカゴをヒントにした安全対策の治具。このアイデアは関西ペイントグループのすべての関連工場に導入され、袋巻き込まれ対策として活用されている。

この他、静電気や地震対策などの"光りもの"、職場の安全や品質の維持向上、5Sなどへむけた班活動、3現KYの演練など内容の濃い工場見学会となった。

最後に大塗協の水谷理事長が日本化工塗料に工場見学の感謝を述べるとともに、「関塗工と大塗協の交流事業として行った本日の工場見学会で学んだことを各社とも社内に持ち帰り、改善活動や生産性の向上に生かしていきたいと思います。日本は、中小企業が元気にならないと経済は良くなりません。今後も交流事業を通じて塗料産業を盛り上げていきたい」と述べ、活動継続への意欲を示した。



「東西交流会」記念撮影
「東西交流会」記念撮影
工場見学を実施
工場見学を実施

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