ウイルス接触感染対策商品が急伸

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、関西ペイントの漆喰塗料「アレスシックイ」の派生商品が爆発的に売れている。不織布に漆喰をコーティングした抗菌・抗ウイルス商品の「接触感染対策テープ」は、用意していた数万個が2月中に完売。引き続き市場からの要望が強いことから、生産が速いシートタイプに代替し、「接触感染対策シート」として急遽発売、供給を始めた。「漆喰の持つウイルス不活化効果が、今まさに世の中のためになる機能」とし、漆喰塗料の応用製品の開発を急ぐ。


同社は昨年9月に、アレスシックイの2次商品として「接触感染対策テープ」を発売した。漆喰をコーティングした不織布に粘着層を裏打ちし、幅10cm×長さ5mのロール状にして商品化。任意の長さにカットし、ドアノブや手すりなど人の手が触れやすい部位や箇所に貼って使用する。漆喰の主成分である消石灰の強アルカリが表面に付着したウイルスや菌を不活化させ、接触感染を抑える効果がある。

同社の漆喰塗料は、新興感染症の世界的権威・長崎大学熱帯医学研究所の試験で、ウイルスの残存率が99.9%減少する高い効果が実証されている。銀イオンや銅イオンなどを用いた他の抗ウイルス商品よりも即効性が高く、自然素材"漆喰"の持つ衛生機能が改めて注目されている。

ウイルスは感染者が咳やくしゃみを押さえた手で周りのものに触れ、そこを介して他の人に移る接触感染が多い。その対策商品として、当初はインフルエンザ感染対策を目的に同品を発売した。

開発を担当した同社・工業塗料本部の大和浩文氏(写真)によると「発売当初はほとんど売れなかったのですが、昨年はインフルエンザが早く流行し始めたため複数のテレビ局が当品に着目。情報番組で放映された11月頃から商品が動き始めました」と説明。インフルエンザによる学級閉鎖を防ぎたい小中学校や、利用者の安全性を高めたい病院、介護施設などでドアノブや手すり、ベッドフレームなど人の手が頻繁に触れる箇所で利用され始めた。

そして年が明けて今年2月、事態が急展開した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、発売時に用意した初回ロットの2万1,000個が瞬く間に完売。その後も学校や病院、介護施設に加えて各種企業や公的機関・施設などからの引き合いや注文が殺到したが「『接触感染対策テープ』は起毛によるソフトフィール加工を施すなど生産に時間が掛かり早急に対応できない」(同)。そこで、不織布に漆喰をコーティングしたシンプルな無起毛タイプのシート材「接触感染対策シート」を急遽開発、3月30日から供給を始めた。

同シートも漆喰の強アルカリによって表面に付着したウイルスを不活化させ、接触感染の抑制効果に優れる。幅10cm×長さ20cmの白色のシートで、同じく粘着層が裏打ちされており任意のサイズにカットして使用できる。荷姿は3枚入り1袋で、L型ドアノブ約6個分をカバーでき、希望小売価格は1,500円(税抜)。「国内の全工場に導入したいといった企業からの引き合いや、公的機関から一度に数百袋の注文が入るなどオーダーの規模が一気に膨らんでいる」(同社建築塗料本部本部長・中野佳成氏)とし生産を急ぐ。また、完売した「接触感染対策テープ」も追加生産準備に入っており、企業などへの需要に対応した百数十メートル単位のサイズも揃え、今秋のリニューアル発売を目指す。

開発者の話
工業塗料本部・大和浩文氏

----「接触感染対策テープ」の開発経緯を教えてください。

「当社は漆喰塗料の超弾性化技術を確立し、布や紙、フィルムなどの柔らかい素材に漆喰をコーティングできる『アレスシックイ モンティアート』という製品を開発しています。それを応用した2次製品をつくれというのがミッションでした。商品化に際してはターゲットを"接触感染対策"に置き、必要な箇所に必要な分だけカットして貼れる"テープ"という形態を考案しました」

----商品化へのハードルは。

「不織布にロールコーターで前述の塗料をコーティングしています。通常はラインに合わせて塗料をモディファイするものですが、塗料の特性上、ラインスピードを遅くして低温で乾燥時間を長くとってもらうなど、塗料に合わせてラインを調整してもらいました。粘着層の加工や梱包もそれぞれ別の業者さんに依頼してベストマッチを図ったので、それらの生産調整に手が掛かりましたね」

----商品のセールスポイントは。

「付着したウイルスを不活化させて接触感染を抑制する本来の機能に加え、不織布を起毛させて優しい手触り感を付与したのもポイント。金属のドアノブなどに貼ると、触れても冷たく感じないとお年寄りの方などに好評です。ただ、起毛した不織布にコーティングしただけでは仕上がりが粗く商品になりませんので、特殊なコーティング方法によってその問題をクリア。接触感染抑制機能と手触り感を両立した完成度の高い商品に仕上がりました。アレスシックイを展開している建築塗料部門と私ども工業塗料部門の垣根を超えて誕生した商品で、そういった意味では関西ペイントならではの象徴的な商品と言えるかもしれません」

----使用者の反応は。

「顕著な例として小学校の先生方からの声があります。トイレの手すりや、扉の引手、窓枠の桟などに『接触感染対策テープ』を貼ったところ、それまで何度注意しても手洗いが習慣化しなかった子供たちが自ら率先して手を洗うようになったと。つまり、いろんな箇所にテープが貼られていることで学校の感染対策への取り組みが摺りこまれ、衛生に対する子供たちの意識を高めているとの評価でした。また、病院や介護施設でもアルコールなどによる目に見えない消毒よりも、感染予防対策が可視化でき利用者の安心感を高めているとの声をいただいています」

「今回の新型コロナクライシスによってすべての国民の衛生意識が高まっています。そこに役立つ第2、第3の製品開発を進めるとともに、現行の『接触感染対策シリーズ』の生産体制を強化し、供給力を高めていきたい」



急遽発売した「接触感染対策シート」
急遽発売した「接触感染対策シート」

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