バイオマスUV硬化型ニスを開発
ラベル市場に参入

荒川塗料工業(本社・埼玉県さいたま市、代表取締役社長・澤田和宏氏)はバイオマスUV硬化ニス「ハイグロスUV-981B」を開発した。環境配慮製品として日本有機資源協会のバイオマスマーク認定を取得した他、糊面印刷の糊殺しにも効果があることから、印刷用ラベル市場への参入を本格化させる。


同社は現在、印刷物やパッケージの保護用コーティング剤の製造・販売をメインに、建築用塗料や床材なども製造している塗料メーカー。その他、資材や保護用フィルムなどの販売も行っている。

これまで、同社の主要顧客は印刷用のコーティングなど加工専門の業者であった。しかし、紙媒体である出版物が年々減少しており、全体的な紙の加工量も減っている現状がある。そこで同社では新たな市場を模索し、既存製品であるUVニスの需要開拓を開始した。

そこで注目したのが川上に位置する印刷業界。近年、業界内のブランドオーナーの要望として多いのが、環境負荷を軽減できる印刷資材。「特にグローバルで展開している企業はブランドイメージにも影響するためSDGsなど環境関連に敏感。海外では、同じ製品であれば環境にやさしいものを買うという傾向も出てきている」(担当者)と最近の印刷業界の需要傾向を話す。

また、ラベル印刷にとって、ラベルなどの糊面に貼る離型紙は常について回る。ラベルをはがすと剥離紙は使用しないため、削減やリサイクルに取り組んでいる企業も多く、少しでも環境にやさしいものを使用したいという要望があった。

そこで浮上したのが、バイオマスマークの存在。同社では当初から日本有機資源協会のバイオマスマークが取得できる"植物由来の成分を10%以上配合する"ことを目指し開発をスタートした。約1年を経て今回の新製品投入に至った。

バイオマスマーク取得ニスが誕生

今回同社が開発したバイオマスUVニス「ハイグロスUV-981B」は紫外線硬化型のUVニス。植物由来の成分を10%以上含有しているのが最大の特長で、バイオマスマーク(190233号)を取得。種子や間伐材などを使用した再生可能な生物由来の有機性資源を活用した環境にやさしい製品として認証された。「バイオマスマークの登録製品を見る限り、フレキソ機やグラビア、ロールコーターなどの塗工機で塗る製品ではおそらく業界初」(担当者)と自信を示す。

また、ヒアリングを進める中でラベル印刷会社から粘着力を無効化できるニスの需要を発見。そこで同社では開発品に "糊殺し"と呼ばれる加工にも適応させた。

通常、糊面の印刷用ラベルには全体に糊を付ける加工がある。その後、糊面にニスを塗工し、シールの一部分だけ粘着を殺す(貼りつかなくする)加工が"糊殺し"だ。主な用途として洗濯洗剤やペットボトル製品などに貼られ、シールが商品から飛び出しているように見せるポップアップシールに使用されている。「ニーズに合致した機能を付与したことで環境対応のUVニスの用途を更に広げられた」(担当者)と話す。

その他、光沢反射率93%とUV硬化タイプのニス本来の性能を維持しつつ、光重合開始剤の臭気を抑制するといった特長もある。食品や化粧品の外装用パッケージ・ラベルへの使用も想定し臭いが付着しないよう配慮した。黄変も少なく、柔らかな塗膜を形成し、細かなクラックが発生しにくい。

市場参入に好感触

これまで同社では印刷物やパッケージ用のコーティング剤がメインだったため、印刷用ラベルへの展開は初めての試み。市場を調べていくと「実際にUV印刷を採用しているラベル印刷会社が多いことから、当社の製品が受け入れられるのではないか」と考え、新製品の試作をラベル印刷会社に提案。テストを実施したところ、良好な結果を示した。

中にはバイオマス製品の提案を採用し、同社の開発品に置き換わる例もあり、好感触を得ている。「加工会社にはある程度知られているが、印刷会社とは直接の取引がまだあまりない。今回の製品投入でユーザーの裾野を少しずつ広げていき、早い段階で量産体制に持っていければ」(担当者)と期待を寄せる。

現在は取引がなかった新規の顧客から問い合わせが来ている状況。今後は代理店含め取り扱う業者を更に増やすため製品の周知活動を積極的に行っていく。

バイオマスのラインアップを拡充

同社では今後、バイオマス成分を使用した製品ラインアップを拡充していく考え。圧着はがき用のコーティング剤などの市場投入を進めていく。

一方で、植物由来の成分を更に増やしてほしいという要望も一部で出ているという。「今回の開発においては、従来のUVニスと同等の使用感を保つため、植物由来成分を10%とした。植物由来成分の配合割合を高くすると、デメリットが生じる」(担当者)と現状の課題を説明。継続課題として更にバイオマス成分比率を高めるための研究開発に取り組んでいく意向。



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