木工塗料メーカーの玄々化学工業(本社・愛知県津島市、代表取締役社長・宮田修平氏)は森林総合研究所と共同で国産スギから取れるセルロースナノファイバー(CNF)を木材用塗料に配合させる開発事業を行った。CNFを下塗り剤(シーラー)に配合することで塗膜が安定化し、屋外での変色防止効果が見られた。12月には本社敷地内にCNF製造プラントを新設予定とし量産体制を整えて本格的な市場展開を図っていく。
木材の構成成分には、リグニン、ヘミセルロース、セルロースがあり、そのセルロースを細かいナノレベルまでほぐしたものがセルロースナノファイバー(CNF)と呼ばれている。
木材原料(チップ)をほぐし(パルプ化)、次の工程として酵素の働きを利用した湿式粉砕を行いナノ化し、CNFを製造する。
CNFは、鉄の5倍の引っ張り強度を持つ軽量高強度、熱による変形が少ない、表面積が大きい、ガスバリア性が高い、粘性を有するといった特徴がある。製紙メーカーなどが量産設備を有し、さまざまな産業に活用されており、今後世界的にマーケットが拡大していくと見られている。
独自にCNFの開発に取り組んでいた同社に、森林総合研究所が声をかけて共同開発の流れとなり、5年前から林野庁の補助事業として共同で技術開発を行っていた。なお、今年3月で終了している。
変色抑制を実現
同社ではCNFを木材の外部用塗料へ応用するための方法を開発した。エクステリアとしての木材の用途を拡大していくためには、美観や耐候性を維持するための塗料が重要となっている中で、「外部用塗料に配合することで耐久性が向上することが分かった。ウェザーメーター試験で評価したところ、CNFをシーラーに添加することで美観の保持時間が延びることが実証できたため、製品展開していく」(取締役技術部長・大木博成氏)。
添加するCNFは粘度が低く重合度が低めのCNFでシーラーへの高い適性が得られた。粘度の高いパルプを使用する場合は前処理やナノ化条件の調整が必要になる。
CNF配合の下塗り用塗料を塗装した試験片とそうでない試験片では、CNF配合の方が色差(1,000h)で約4分の1小さくなった。
使用する色が淡色になるほど木材の変色が目立ってしまうため、CNF配合シーラーを塗ることで淡色の塗装でも木材の劣化を抑える効果が期待できる。
CNFを利用することで塗膜が安定化し、耐水性や耐光性が向上し、屋内外での変色防止などの美観保持につながる。
同社ではCNFが塗膜の樹脂同士をつなぐ可能性や木材と塗膜の界面をつなぐ可能性があるとの見方を示し、解析を続けている。
CNFシーラーの有無による塗り替えに関する試験(写真1)では、塗装後ウェザーメーター3,000h曝露した後に軽く研磨(素地調整)すると、CNF(品番SW)未塗装では塗膜が剥がれてしまうが、CNFを塗装したものでは剥がれがなく密着性に優れていることが分かった。
CNF製造プラント、来春稼働
数年前から試験施工を実施しており、これまで木製ベンチや木製フェンスなど5カ所で行っている。同時に物件ごとの試験販売を開始している。
現状、試験販売としているのは原材料が足りないため。そこで製品展開に向けて、森林総合研究所の技術サポートを受けCNF製造プラントの建設に着手。今年12月には設備が揃う予定で、試運転を行った後、来年春頃には生産を開始する予定としている。
製造プラントは1バッチで50L製造でき、週3回作ると150L、月に600Lとなり、塗料に換算すると1~2トンが想定できるので、「立ち上がりとしては十分」(大木氏)との見方。
製品展開について、価格的にはCNF配合量が多いわけではないことなどから販売に際し価格がネックになることはないとの見方を示す。また、CNFはさまざま特徴を有しているため、外装用塗料だけではなく他の分野への使い道も探っていく方針だ。