日本塗装工業会の会員企業(2,262社)による年間完成工事額(完工高)が1兆円の大台を超えた。同工業会が今年3月に発表した2024年度の塗装工事業者実態調査によると、会員企業合計の完工高は、前年度比105.7%の1兆42億円となり、1997年以来27年ぶりに1兆円の大台を突破した。完工高が底を打った2011年から右肩上がりを続け、同年比で3割以上市場が拡大。既存建築物の膨大なストックを背景に、建物の改修需要が塗装市場をけん引している。
日本塗装工業会は毎年会員企業へのアンケート調査で、9月1日から8月31日の1年間における経営実態調査を実施。この期間における各社の完工高とその内容、従業員数や技能工の年齢構成、外国人技能実習生の就労数、社会保険加入状況や建設キャリアアップカード取得者数など多岐にわたる項目を調査。それらを都道府県支部別データにまとめ、毎年3月に発行している機関誌「日塗装誌」で、「塗装工事業者実態調査」として公表している。
今年3月に発行された日塗装誌の塗装工事業者実態調査によると、会員企業合計の完工高は前年度比5.7%増の1兆42億円となり、27年ぶりに1兆円の大台を超えた。
日塗装会員企業の完工高は1996年に1兆330億円のピークを記録。翌1997年も1兆円台をキープしたものの、そこから減少に転じリーマンショック後の2011年に7,010億円まで落ち込んだ。ピーク時に比べ、3割以上も市場が縮小した計算だ。その後は反転して増加基調を辿り、コロナ禍の影響で3年前に一旦下がったものの、2011年以来ほぼ一貫して右肩上がりの成長を続けている。
ただその内容は、以前とは大きく異なる。前回1兆円台を超えた1990年代の半ばは、改修工事と新築工事の割合が6:4程度だったのに対し、2024年のデータでは改修工事が85%と圧倒的な比率を占めている。しかも塗装市場が底を打った2011年からは、改修需要の増加がそのまま完工高の回復をけん引している構図が鮮明で(グラフ参照)、建物ストックを対象とした塗装ビジネスの有望性を示している。
国土交通省の統計(2018年)によると、住宅・非住宅を含めた建築物の延床面積の総量は約77億4,000万平米で、前年比0.2%の増加。その前の5年間も右肩上がりを続けており、建物ストックの総量は増大している。それらの改修需要に加えて、橋梁や土木構造物など社会インフラ施設の改修需要も加わり、塗装ビジネスの市場性を広げているかたちだ。
今回発表された完工高のデータによると、新築・塗り替え工事別では新築工事14.5%に対して改修工事が85.5%の割合。また、工事の種類別では、建築塗装50.1%、防水8.7%、橋梁塗装11.9%、タンクプラント5.6%、道路ライン・土木コンクリート等3.2%、その他20.5%と会員企業の工事の内容も分散。建物やインフラ施設の改修需要に軸足が移ることによって建築塗装以外にも活躍の場が広がり、業績を押し上げているかたちだ。
一方で、塗装市場の成長に貢献してきた戸建て住宅の塗り替え需要がこの1~2年で急速に冷え込んできており、次年度の完工高への影響も懸念される。改修需要増大の成り行きに任せた受動的な成長から、自ら需要創造に向かう能動的な向き合い方も、業界には求められている。
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