工業用塗料ディーラーのNCC(本社・長野県伊那市、社長・原田学氏)は昨年、塗装とUVインクジェットプリンタを融合した提案「デジリア(DigiRea)」(商標登録出願中)をスタートさせた。高精度で立体的なデザインを表現するインクジェットプリンタの加飾機能と幅広い基材適性を持つ塗装を合わせて用途性を高めたのが特徴。「単なるシステムの提案としてではなく、当社の仕事のスタイルと捉えている」(原田社長)と「デジリア」に塗料ディーラーとしての未来像を見据えている。
「デジリア」は、デジタルとリアリティに由来する同社オリジナルブランド。そのブランドを体現した1つが、RolandのUV-LEDランプ型インクジェットプリンタ(デジリア専用)と塗装を組み合わせたデジタルリアリティ塗装。屋内外で使われる多種多様な製品にデジタル加飾を施すことができる新加飾システムとして開発した。
生産工程は、ワークに対し専用プライマーを塗装し、その後インクジェットプリンタによるデジリア印刷、最後に専用クリヤー塗装で仕上げる。白、クリヤー、グレーの3色を揃える専用プライマーで基材とデジタル印刷との密着性と意匠下地を確保し、専用クリヤーでデザインの美観保持、耐候性を付与できる。対応可能ワークサイズは、奥行き458mm(最大)、幅610mm、高さ204mmで立体物への加飾も可能。更にガラスや金属など幅広い基材に適用する。
プリント加飾技術は、高精細な意匠デザインを均一に表現できる手法として工業品やファッション分野で需要を伸ばすが、より基材への適用を広げ、用途の制約を打破したところに「デジリア」の価値がある。「すべての基材、物性要求に対応したUVインクがない現状において、塗装との融合で加飾の領域をもっと広げることができる」(原田社長)と自動車部品や工業品など加飾を求める幅広い分野に導入を訴求していく意向だ。
仕事のスタイルとしての「デジリア」
今回、同社が「デジリア」を打ち出した目的は、インクジェットプリンタを活用した新加飾技術の普及もさることながら、デジタルとリアリティ(アナログ)との組み合わせを積極的に講じていく同社のこれからの仕事ぶりを示す意味合いもある。
言い換えれば、デジタルとアナログの活用で最適解を求めていく考え方。生産性向上や環境対応など複合的な課題を抱える顧客の要望に対し、製品やシステム導入のみに依存しない現場対応力に工業塗料ディーラーとしての役割と存在価値を見出そうとしている。
「すべてをデジタルに移管しなくてもアナログと融合を図ることで、低コストで同じ目標を達成することができる」と原田社長。同社はその現場対応力をエンジニアリングサービスと位置づけ、業態の革新を目指している。
そうした「デジリア」の指向を具現化したのが、オリジナル塗装機「NEO EASY COATERシリーズ」の展開。「意匠設計技術を有する当社のエンジニア力を活用し、顧客の持続的発展に貢献していきたい」とメーカー機能の拡充につなげている。
現在揃えるのは、立体塗装機、XY平面塗装機、タンブル塗装機の3製品。いずれも塗装ユーザーが個別で開発委託をしてきた製品群だが、請負製作会社が減少している状況を鑑み、同社が製品化を実現。ユーザーが導入しやすいよう機能を削ぎ落としたシンプルな設計に需要家が反応。昨年10月の「コーティングジャパン」に出展した際、省人化や技能伝承に悩む多くの問い合わせと受注が得られたという。事業規模や工場環境が異なる顧客の課題や目的に対し、いかにして負荷を少なく解決策を導いていくか。事業活動の全領域に「デジリア」の指向を浸透させる考えだ。