法人向け建築資材サイトを開設

オンラインDIYショップ「DIY FACTORY」を運営する大都(本社・大阪市、社長・山田岳人氏)は3月31日、住宅・建築資材ECサイト「DIY FACTORYビジネス」を開設した。新サイトは、法人及び個人事業者を対象に法人価格を設けた他、数量割引、送料無料対応、見積り・請求書払いなどのサービスを備える。既に大手ECサイトが先行する中、「後発の存在は市場全体の活性化に寄与する」(山田氏)と年内に3,000社の登録を目指す。


「DIY FACTORY」は、電動工具や関連資材、家庭用塗料などDIYに特化したオンラインサイトとして2002年7月に開設。その後自社サイトの他、大手ショッピングサイトにも販路を広げ、2021年12月期の売上高は約62億円。今期は73億円を見込み、新型コロナによる巣ごもり需要も追い風に成長力に弾みをつけている。

ネット通販を開始し今年で丸20年を迎えるが、その過程では路線変更を余儀なくされる局面もあった。「当初は日本にDIY文化を定着させたいとのビジョンで、実店舗運営やスクールの開設など個人ユーザーを増やすことに専念してきたが、事業においては20年に及ぶ経験や商品データベースを事業者向けに活用することが社会貢献としても意義が大きいと考えた」と山田氏。個人事業者による売上が過半を超えている現状を鑑み、「今後はプロも巻き込んだ形で新たな住まい方を提案していく必要がある」と事業戦略のシフトに踏み切る。

そこでまず着手したのは、赤字運営が続いていた大阪、東京の実店舗の閉鎖(2019年)。同社にとって多くの人材を失う辛い経験となったが、昨年2月にシステムの開発管理業務を担うベトナム子会社を設立した他、10月には東京・新木場に関東発の物流拠点を設立。EC事業の強化に向けて大きく舵を切る契機となった。

市場相場と連動、独自エンジンを開発

新サイト「DIY FACTORYビジネス」が最大のターゲットに据えるのは、個人事業者を含む法人顧客。

建築資材、工具、エスクステリア、住宅設備、木材、生活用品など180万点を超える商品を有し、塗料においては家庭用塗料ブランドを中心に約1万点(塗装用品含む)。今後は危険物倉庫を構え、業務用塗料の販売も積極化する意向だ。

法人需要の取り込みに際し、同社が重視したのが利便性の強化。ビジネス会員には、通常価格よりも安い法人価格及び数量割引(割引対象商品)を設けた他、購入価格3,000円以上(税込)は送料無料とした。その他、見積機能や後払い決済に対応するなど企業間取引における商慣習に準じたサービスを確保した。

ただ、同社のこうした法人向けへのEC展開は、今回が初めてではない。過去を遡ると2012年に「モノトス」、2017年に「B-DASH」といずれも法人向けECサイトを開設。「B-DASH」(後に売却)では、平日15時半までの注文に対し当日出荷に対応するなど、当時としては斬新なサービスを打ち出したが、長くは続かなかった。

その理由について山田氏は「当時はロスリーダーを打ち出せなかった反省がある」。いわゆる集客数を上げるための目玉商品を指すが、特にリピート需要の高い消耗品において独自プライスを訴求し切れなかったことが断念の要因となった。

そこで同社が講じたのは、市場相場と連動したプライシングエンジンの開発。「予め設定したプログラムによって価格が自動で変わるようになっている」と説明。人員による値付け業務をあえて不要にすることで、市場相場との連動を担保した上でロスリーダー商品とその他商品との価格ギャップを解消した。またユーザーの利便性を図るため、登録情報や利用履歴によって表示画面がカスタマイズされるユーザーインターフェースを採用。ユーザーの業種や職種に応じた商品をピックアップし、表示する機能をもたせた。

一方、法人ECで重視するのが、仕入れ先となるメーカー及び問屋との関係。「180万点の商品の内、当社の倉庫で在庫できるは約1万点。ロングテールビジネスにおいては、仕入れ先との協業が欠かせない」とのスタンス。そのため、以前より同社と仕入れ先との間で在庫情報の共有化を図る独自システムを運用する他、在庫数以上の注文が寄せられた際には、1次、2次と複数ルートからの調達体制を構築するなど、欠品を極力抑えた在庫連携体制を差別化に据える。更に今後は、社内で運用してきた販売情報を仕入れ先に開示する方針。時期や地域による売上の違いをブランド別で示せるデータ提供も付加価値にする構えだ。

初年度3,000社の登録を目指す同社がベンチマークに据えるのは「モノタロウ」の存在。取扱い点数1,800万点、当日出荷点数61万点を誇る製造・建築現場系法人ECの最大手だが、同社としては一強市場に楔を打ちたい考え。「コンビニと同様、消費者に選択肢を提供することが市場全体の活性化に寄与する」とセカンドチョイスとしてのポジション獲得に挑む。

EC活発化の背景に実店舗を主体とした既存商流への影響が懸念されるが、山田氏は「ECは、企業の大小問わず利用すべきツールと考えており、きめ細やかな説明や即日納入など地域店に太刀打ちできないサービス」と説明。ECを前提とした利便性競争に時代の先行きを見ている。



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