車のボディに艶消し塗料を施すカー用DIYペイントや好みの色を1kgから提供する塗料調色サービスなど、従来の枠にとらわれない独自のサービスで塗料需要を喚起し続けるタカラ塗料(本社・大阪市西成区)。大野一馬社長は「塗料のセレクトショップとして床用塗料にも力を入れていきたい」と、オリジナル床塗料の発売に向け、準備を進めている。

今回のオリジナル床用塗料の商品化検討に遡ること約7年前、同社はグレーを中心とした3色の塗料を重ね、ぼかして仕上げる「コンクリートエフェクトペイント」を発売した。

塗装で打ち放しコンクリートの風合いが得られる現在も根強い需要を誇る人気商品。発売当初は、内壁や雑貨などの小物品での用途を見込んでいたが、3年前に自社ショールームの床をスタッフで塗装。その時の様子を紹介したブログ記事が反響を呼び、床面での採用も増えてきたという。

「実はブログで紹介する前から床塗装に関する相談が一定数あったことが、ブログで発信するきっかけになりました」と大野氏。「特に店舗関係からの問い合わせが多く、Pタイルや塩ビシートを剥がし、コンクリート調の風合いに仕上げたいという要望が多い」と話す。

更にユーザーの関心の高さを裏付ける話として、先日とある講習会で大野氏が内装施工業者7社に会ったところ、内3社が「コンクリートエフェクト」の購入者であることが判明。コンクリート調仕上げに対する人気の高さを浮き彫りにすると同時に、素人、プロ双方のニーズを捉えた商品であることを示した。

最大の要因は、塗装でコンクリート調仕上げが付与できる"意匠性"に特化した点。

商品を紹介するサイトには、塗り方や工程、適応素材、面積当たりの必要量、価格情報について動画を交えて詳細に伝える一方で、塗料の樹脂系や性能面の特長を示す記載は一切見られない。

ここに自ら"塗料のセレクトショップ"と称する同社ならではのスタンスがある。

塗料ではなく、完成を選んでもらう

同社は、今春「コンクリートエフェクト」を床向けに進化させた床専用塗料を発売する。「(床に合った)もっとダークな色が欲しい」という客の要望に対応したもので、色調や仕様を見直した上で商品体系の構築に取り組んでいる。

塗料販売をメインにする同社にとっては、メーカー品をオリジナルブランドに落とし込む作業が伴うが、大野氏いわく「床用塗料は種類が多く、何を選んだらいいか分からない」。「常備色になぜ緑が多いのか」「なぜ調色に制約があるのか」。メーカーと客の間に立つ販売店として、ニーズに対して的確に商品を提供する難しさを強調する。

しかし、同社にとっては、この床用塗料の難しさを、未開のマーケットとしてチャンスと捉えた。

「当社には、接客や問い合わせによって蓄積してきた豊富なデータベースがあります。お客さんの悩みや欲しいものに応えることで需要は生み出せると考えています」と期待する。

新商品は、コンクリート調仕上げができる床用塗料として、ベース色、エイジング色、トップコートをラインアップする予定。塗膜物性の確保を目的に新たに導入するトップコートについては、複数メーカーの製品を取り寄せ、社員で塗装。塗りやすさや仕上がり感、作業性、色映え、艶感など素人でも失敗なく望む仕上げが得られるか、何度もテストと検証を重ね、絞り込んでいった。

「お客さんには、期待通りの仕上げを手に入れてほしい」と大野氏。塗料選びを客に委ねるのではなく、店側が担うべきとの考えが同社全体に共通する価値観となっている。

現在、各顧客を想定したWEBページの作り込みを行っている段階。素材や用途に応じて、トップコートも数種類を揃える計画。店舗や工場、住宅などシチュエーションにマッチした塗装空間を提供する。

今後、同社としては、床用塗料を含む「コンクリートエフェクトペイント」をカーDIYペイント、調色サービスに続く柱に育てたい考え。「床を幅広く捉えれば、ベランダ床も可能性があると見ている」と次の商品展開の構想も見据えている。