日本建築ドローン協会(JADA)とドローンスクールを展開するミラテクドローン、ドローンを通じた市場創造を支援する日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は共同で「ドローン建築物調査安全飛行技能者コース」を開講した。1月24日に開講式を行い、ドローンを使った点検方法などを公開した。
今回開講したコースは都市部での建築物外壁点検を安全に行う人材を育成するのが目的。開講式では、日本建築ドローン協会の本橋健司会長があいさつし、「このコース開講を通じ、建物の検査をより低コストで安全に行うことは社会課題の解決につながる」と述べた。

国交省は平成20年、建築基準法第12条に基づき、竣工または外壁改修から10年経過した建物は全面打診などによる調査を求める、いわゆる"12条点検"を告示。ただ、外壁調査には足場やゴンドラを使用しなければならず、施主の負担につながっていた。2022年4月からは、外装仕上材などの調査について、打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査ができるようになった。こうした背景から、3者が連携し、建物の外壁点検のコース開講に踏み切った。

今回開講したコースは都市部で安全に外壁点検をする専門人材育成を通じ、ドローンの有効活用を目指す。JADAの宮内博之副会長は「共同住宅の住宅数はこの30年間で2倍以上になっており、中でも、15階以上の共同住宅数は平成30年には93万戸と15年前に比べて約3倍に増加。東京や大阪などの都市部に多い」と現状を説明。「この膨大な建物を検査していくためには点検の省力化が必要。特に都市部でのドローンの有効活用が重要となっている」とドローン活用の必要性を訴えた。

都市部でのドローン活用で最も重要なのが安全性だ。操作ミスなどで制御不能になった場合、どこかへ飛んで行ってしまう「フライアウェイ」状態や墜落することでの事故などが懸念される。今回同コースで学ぶのはドローンの機体に強固なワイヤーなどを通して係留した状態でドローンを飛ばす技術。フライアウェイの防止や墜落の際の被害を最小限にできるメリットがある。「係留されているドローンは第3者から見ても安心感がある。見た目にも分かりやすい安全性が施主を安心させる重要な要素となる」(宮内氏)と係留ドローンのメリットを説明した。

同コースで学べるのは地上に係留装置を設置し、ドローンにワイヤーをつなぐ1点係留と、建物屋上に釣り竿のようなブラケットを設置し、ワイヤーを地上まで吊るして、ドローンに取り付けた筒状の治具に紐を通す2点係留。ドローンは建物と一定距離を保ちながらもラインに係留されているため操作不能になっても遠方に行くことがない。開講式後は屋外でドローンを使い、実際の点検の様子をデモンストレーションした。

同コースは建築基準法第12条(12条点検)に準拠。座学と実技を合わせ3日間のカリキュラムで構成。座学では安全管理や係留の知識、ドローン飛行計画書の作成方法などを学ぶ。実技では外壁の最適な撮影方法、1点係留、2点係留時のドローン操作などを2日間かけて習得する。宮内氏は「ドローンを活用した点検調査に求められるのはチームワーク。操縦だけではなく、補助者や映し出されたモニターを確認する責任者などさまざまな役割を実技で学ぶことで、適切に安全に調査できる人材を育成していく」としている。

今回のコースは300以上の認定スクールを運営しているミラテクドローンが運用。同社の佐々木康之社長は「さまざまな分野で専門的なドローン活用の機運が高まっている。多様なニーズを満たすことに加え、安全にドローンを活用し建物を点検するという社会課題の解決にもなる」とこのコースの意義を説明した。

対象者はJADAの建築ドローン安全教育修了者、JUIDAの操作技能証明保持者と安全運行管理者証明の保持者。JUIDAの証明は昨年12月から開始されたドローンの国家資格「無人航空操縦者技能証明」でも代替が可能。コース修了者には日本建築ドローン協会及び日本UAS産業振興協議会から修了証が発行される。受講費用は39万6,000円/人。最小参加人数を3名としている。既に1月24日から第1回コースが始まっており、今後の開催スケジュールは3月22日~24日。その後は申し込み状況に応じて1カ月に1度ほどのペースで開講していく予定。