塗料ディーラーの中島商会(本社・岡山県岡山市、社長・中島弘晶氏)は2022年、自社の危険物倉庫に遮熱塗装を施し、暑さ対策として絶大な効果を生み出した。きっかけとなったのは、年々厳しさを増す夏場の暑さ対策と保管する塗料品質の保持。「塗料メーカーと顧客の双方から遮熱塗装の取り組みが評価された」(担当者)と従業員の体力負荷軽減と合わせ、ディーラーの存在価値を高める施策となった。遮熱塗装に至った経緯とその後の効果について話を聞いた。

詳細の場所は、「顧客との塗料の販売、保管、納品、引き取りなどを常駐対応している関係から公表は控える」(担当者)としつつ、同倉庫は近隣に顧客工場を擁し、毎日ドラム缶でピストン輸送を行う主要ストックセンターの1つ。約900㎡の敷地に、約600㎡の床面積を有する危険物倉庫で常時7名の社員が入出荷や検品業務を行い、顧客工場のサポートに努めている。

築20年が経過した同倉庫に遮熱塗料を塗装したのは、2022年夏。塗装面積にして約900㎡の折板屋根に日本ペイントの「サーモアイSi」を塗装した。施工は取引関係のある塗装会社に依頼した。

きっかけは作業者の環境改善。「年々最高気温が更新する中、夏場の現場環境が厳しさを増しており、不可避の施策と判断した」と暑さ対策に着手する。
そして見出したのが、遮熱塗装。危険物倉庫のため、空調服の装着やエアコンの設置ができず、遮熱塗装が暑さ対策として講じられる唯一の方策となった。

そして屋根面に塗装したところ「施工前に記録した庫内の最高温度は45.9℃。それに対し、塗装後は36.1℃を上回ることがなくなった」とたちまち効果が表れる。気温や日射量などが違うため、厳密な比較にはならないが、庫内温度の違いは歴然。特に効果を体感したのは、日中フォークリフトで荷捌きをする社員だ。

倉庫業務に従事する57歳の社員は「午前、昼、午後と1日3回着替えていたシャツ交換が必要なくなった」と発汗量に明らかな違いが生じたという。「閉ざされた空間であるがゆえに、サウナのような環境にあったが、施工後は外よりも遥かに涼しくなった」と効果の大きさを強調する。

折板屋根を設えながら、断熱材も開口部もない危険物倉庫ゆえの効果と言えるが、同社としては、「社員の健康管理、安全管理に寄与する方策となった」と評価する。
更に昨年には、より遮熱効果を高めようと外壁にも遮熱塗装を実施。秋に施工したため、夏場の比較データは今年の計測となるが、「庫内の温度が外気温を上回ることはない」と効果に期待感を示す。

一方、作業環境を改善した副次的効果として、保管塗料の品質保持に寄与している可能性を見出し、「施工後に塗料メーカー、顧客から遮熱塗装に対する評価の声を頂いた」と同社の存在価値を高める事例ともなった。
同社では今後、自社事例の全社共有を図り、他倉庫での導入をしていく方針。加えて「これからお客様に自信を持って提案できる」と営業展開に弾みをつけている。
◇記者の目
 日頃、ユーザーに塗料を供給する塗料ディーラーが自社物件を通じ、塗料の遮熱機能を実感した意義は大きい。遮熱塗料は、開口部や断熱材の有無など建物構造の違いによって一様の効果が得られない難しさがある中、遮熱効果を最大限引き出せる建物として危険物倉庫を顕在化させたからだ。
 近年では、室内温度を低減する省エネ効果にアピールが集中するが、"暑さ対策"も十分な市場価値があることを知る事例となった。