装武(本社・東京都足立区、代表取締役・渡邊武氏)は足場業者との連携を強めていく。渡邊社長は「足場業者の良し悪しで当社の評価が決まることがある。足場作業は非常に重要」との見方を示し、塗装と足場の連携強化で品質向上を図る。それだけでなく、昨年から足場に関する規則が改正される中で、安全面においても連携することでメリットを出せるとの考えだ。
装武は大手ハウスメーカーなどの戸建て外装リフォームをメインに事業を展開しており、近年では元請け工事のB to C事業にも注力している。戸建ての塗り替え工事はひと月に200棟ほどを施工している。
その中で現在着手しているのが足場業者との連携だ。塗装業者にとって足場は非常に重要であり、それは塗装の作業性や安全性だけでなく元請けとの関係性でも影響が少なくない。
元請企業からすると足場も含めて外装工事を発注するため、足場も塗装も一体との考え。そのため、「塗装技術や塗装職人の質が良く実績を残していると認識されていても、足場職人さんの対応や接客に問題があると、最悪の場合は装武が発注停止を受けることも考えられる。要するに足場の評価が装武の評価になる」という実状があるため足場との連携が重要となる。
構想としては、足場の優先会社を決めることで、スケールメリットを生かして品質を上げる。装武の事情や都合に合わせた足場作業を行うことが狙い。作業のしやすさだけでなく、装武の基準のマナーや品質についても要望したいとの思いだ。ひと月200棟をこなす同社だが、優先会社としたときの足場金額は「1,000万円くらいの金額になる」(渡邊社長)ため、足場業者にとってもメリットは大きい。
外装リフォーム工事で足場の重要性が増しているのは労安規則の改正の影響もある。4月1日から改正労働安全衛生規則が施行され、幅が1メートル以上ある箇所に足場を設置する場合は、本足場の使用が原則義務化された。昨年10月からは足場の点検時において点検者の指名が義務付けされている。
従来、住宅外装リフォームでは本足場に比べてコストが安く設置が簡単な一側足場が基本だったが、改正により本足場の使用が増えることになる。4月以降の工事では足場代が上昇する一方で、「工事積算基準を考えると単価が合わなくなる」と危惧する。元請けに対して上昇分を価格転嫁できる場合もあれば、現実的には難しいことが予想されるためだ。つまりコスト負担は塗装業者に来る。
また、足場点検と指名義務及び記録保存義務によって、安全パトロールの頻度が増加、「足場の是正工事がすごく多くなった。足場をかけると1度、2度は必ず是正に行かないといけなくなった」と従来にはなかった作業負担が増えている。
しかし、施工側の立場からするとパーフェクトな足場はほとんどないという。「戸建てには、庭、植栽、物置、カーポートがあったり、施主の要望で大切な花壇がある場所には足場を立てられないケースや、生活通路はどうしても開けるなどさまざま。仮に粗探しのように点検すると、"是正箇所なし"はありえない」と指摘する。
こうした観点からも足場業者との連携が必要となる。規則に則った上で、作業のしやすさを追求する足場環境を整えることを目指す。
また、足場にも関わるさまざまな業務のDX化にも取り組んでいる。例えば、現場調査において、3Dスキャナで住宅外周を撮影し点群データを生成。それを3Dモニターで起こすことで、大勢が現場調査に行かなくても、敷地寸法の計測や周辺に何が置いてあるかなどが確認できる。現場の詳細な情報をデータで獲得し、関係者で共有できれば、わざわざ現場に行って大勢で打ち合わせをする必要がなくなる。
渡邊社長は「往復の時間や人工、駐車場代など、"現調"にかかる労力やコストを下げることで、その分品質向上にかけたり、ロープライスにあてた方が施主のためにもなる」との考えだ。
今後、足場業者との連携の成果を最大化するためにもB to C事業の拡大を図っていく方針だ。
その際に強みとするのが「SBアート」ブランドであり、SBアートに特化して外装リフォーム事業を展開していく計画だ。
SBアートとはサイディング改修工法で、サイディングの貼り替えや塗り替えをするのではなく、意匠性仕上げ材で施工する。サイディング壁を大壁に変えることで、「塗り替えをやるのではなく、外壁を刷新する会社としてアピールしていきたい」(渡邊社長)。
標準仕様の価格は抑えつつ、オプションで防水仕様や超耐候性仕様などバリエーションを提供する。(ペイント&コーティングジャーナル建築塗料・塗装特集2024Ⅰ)
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