大気社は自動車業界で高まるCO2対策ニーズに対応し、塗装設備における技術開発及びCO2削減提案を積極化させている。

自動車メーカーはカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを積極的に行っており、各社は国が掲げる期限の2050年を前倒しした計画を立てて進めている。そのためCO2対策に関する投資検討は旺盛であり、「CO2排出実質ゼロに向けて、コロナ禍で一時は延期があったものの、長期的に見ると国内では大幅な投資検討が活況の状況」(大気社・塗装システム事業部技術統括部技術管理部長・石田浩三氏)という。

自動車産業において脱炭素の気運が高まる中、同社ではCO2削減に寄与する塗装設備の開発を進めてきた。そうした最新設備の導入をもとにした削減提案を積極化させている。

塗装設備CO2、05年比59%減を提案

自動車製造工程において最もCO2排出割合が多いのが塗装工程であり、塗装設備(前処理、電着、乾燥炉、ブース・空調機、フラッシュオフなど)からのCO2排出量削減提案を推進してきた。

2000年から、自動車塗装ラインのエネルギー試算モデルをもとに自動車塗装1台当たりのCO2排出量を試算し、技術提案を実施。2005年の試算モデルは160.1kg-CO2/台だったが、その後はヒートポンプ技術や高効率機器の導入、ドライ式塗装ブースなどの技術提案により、2020年には70kg-CO2/台まで可能と推定している。

2021年には少風量ブース「i-LAVB」の開発により、塗装ブース内のエネルギーを30%削減することが可能となり、塗装工場全体のCO2排出量としては65kg-CO2/台の技術提案を達成した。更には水素バーナーを熱源とした塗装設備の導入やオール電化などを拡充し次期中期目標を50kg-CO2/台と設定している。

自動車塗装の現場からのニーズが高いのが空調における省エネ化。同社では少風量ブースとして「i-LAVB」を開発、本格展開を開始している。

「i-LAVB」はinnovative-Low Air Volume Booth)の略で、大量のエネルギーを要している自動車塗装ブースの気流の最適化を実現する。

塗装ブースでは大量の風量を給排気している。ブース内の温度と湿度が塗装に影響を及ぼすため、温湿度コントロールが必要となる。

ブース風量を下げるといっても、単純に風量を下げるだけでは壁汚れや後続車への色かぶりが発生するため、給気方法の工夫が必要となる。そこで最適な給気形状や吹き出し速度及び角度を調整し、気流の最適化を図っている。

「i-LAVB」は気流の整流目的の動圧室が不要となる。また風量削減によりファンの縮小が可能となるためブース風量は30%削減できる。

既に海外工場で2件、国内工場で1件の導入予定案件があり、今後も積極的に提案していく戦略だ。

また、自動車塗装において、今後導入拡大を見据えているのがドライブースだ。水洗ブースをドライ化することで、排水に介在するエネルギーをなくすことができるメリットがある。

同社では「i-Dry Scrubber」を展開する。乾式フィルターによる簡易除塵方式の乾式塗装ブースで、塗料ミストを段ボールフィルター内に直接付着させ気流から塗料ミストを分離する。循環水や薬品供給がいらないだけでなく、排水処理設備も不要となる。

今後は、塗着効率100%の自動塗装システム「i-ESTA100TE」の展開の他に、水素燃料による塗装設備の導入検証や塗装設備のオール電化などを進めてCO2対策に向けた製品・技術開発に取り組んでいく。