水素燃焼式バーナCO2排出ゼロ実現、東京ガスと開発

バーナや塗装乾燥炉の製造・販売を行うヒートエナジーテック(HET)は、水素を活用した熱風発生装置でカーボンニュートラルに貢献する。この度、同社は東京ガスと共同で水素燃料を活用した熱風発生装置「AH-NMH2」を開発。水素を燃料にすることでCO2が発生しないため、自動車や建材など幅広い分野での塗装乾燥工程のCO2削減に貢献する製品として本格的に販売を行っていく。3月23日には共同で記者発表を行い、同品を披露した。


HETは2021年に桂精機製作所熱設備事業部と東京瓦斯電炉を統合し新たに設立された。桂精機製作所グループの熱設備事業の経営資源を集中させ、エネルギーソリューションカンパニーとして歩みを進めている。2018年に福井県で行われた国民体育大会では世界で初めて水素燃焼式の炬火台を開発した。

一方、東京ガスは「CO2ネット・ゼロ」を掲げ、脱炭素ソリューションを通じて顧客の課題解決を目指している。

そんな両社の思いが一致し、2021年から工業炉による水素を活用した熱風発生装置の共同開発をスタートさせた。「燃焼式工業炉の燃料利用によるCO2排出量は6.2%。この排出量の削減が目標」として水素活用に着目した。

水素は燃焼時にCO2が発生しないため、カーボンニュートラル実現に向けた有望な選択肢の1つとして注目されている。水素の活用について東京ガスは「2050年のカーボンニュートラルを見据え、当社では水素の活用に加え合成メタンなどの開発も行っているが、特に都市ガスの道管がない場所には水素が有効に活用できると考えている。加えて、顧客からも水素活用の要望が非常に多い状況。顧客のカーボンニュートラルの最適なソリューションの1つとして非常に重要な技術」と説明する。

一方、課題として水素は都市ガスや天然ガスと比べて燃焼速度が速く、取り扱いが難しかった。火炎温度も高くなるため、窒素酸化物(NOx)の排出やバーナに使用する部品の損傷が激しくなるなどの課題もあった。

今回両社が開発した「AH-NMH2」は一般的な塗装乾燥炉に使用されるダクトインタイプと呼ばれる熱風発生装置。同品は100~300℃の温度帯の塗装乾燥工程で使用されることを想定。燃焼時にCO2が発生しない水素を燃料とすることで、CO2排出量ゼロを実現する。

最大の特長は燃料と空気の混合の最適化。燃焼しやすいという水素を、空気の出し方を工夫し、燃焼をコントロールすることで解決した。同時に、温度が上がりすぎることによるバーナの損傷も防ぐことに成功した。

また、水素燃焼時に発生するNOxを天然ガス燃焼と同等の120ppm以下(酸素濃度=0%換算値、水素専焼)まで抑えている。

更にバーナ形状を工夫し、定格燃焼量と制御可能な最小燃焼量の比であるターンダウンを従来の天然ガスバーナと比べ広くした。その結果、温度調整のための消火と再点火の回数を減らし、パージ損失などの低減が可能となった。従来の都市ガスやLPGバーナから外形や接続口径を変更していないため、バーナ交換のみで水素燃料への対応が可能で、導入コストを抑えられる。

HETの藤田淳一氏は「ダクトインタイプの塗装乾燥炉での実用化は当社が初。水素はインフラがまだ整っていないことや使用コストが他の燃料と比べて高いなど課題は多いが、他社に先行して技術開発することがエネルギーソリューションカンパニーとしての使命」と技術開発の意義を説明した。

水素は燃焼させる際にCO2が発生しないメリットがある一方で、炉内の水分濃度が高くなる可能性があるという。そこで、同社では神奈川工場に併設されたラボに同品を設置。水素を燃焼することで及ぼす塗膜への影響なども検証できるようにしている。ワークを持ち込んで実証実験できることで、顧客の導入へのハードルを下げる狙いがある。

今回開発した製品は安全装置などもセットにしてHETが販売を担っていく。自動車分野や建材分野などに向け、塗装乾燥時のCO2排出ゼロの提案を進めていく。

記者発表ではこの他、東京ガスとアスファルトプラント大手の日工が共同で開発した水素専焼が可能なアスファルトプラント用水素バーナも発表した。水素を活用したカーボンニュートラルの取り組みが加速している。



塗装乾燥工程
塗装乾燥工程
水素燃料式熱風発生装置「AH-NMH2」
水素燃料式熱風発生装置「AH-NMH2」

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