高効率乾燥で省エネ、省スペース実現

欧州メーカーの輸入代理店業務を行うコーレンス(東京都港区)が国内総代理店として販売する触媒反応乾燥装置「サーモリアクター」の引き合いが増えている。一般的に塗装工場で用いられる熱風乾燥炉に比べて、乾燥時間の大幅な短縮が可能となることから、省エネやCO2排出量削減に寄与するとして、大手メーカーだけでなく塗装専業者からも関心が高まっている。


サーモリアクターはフランスのサンキス社製の特殊触媒ヒーターによる装置で、赤外線(IR)放射により塗装された塗膜を効率良く昇温する。ガスを熱源としている。

特徴的なのがIR放射線の波長域だ。波長域は3~10μm間となっており、塗料の吸収波長域と一致する。一般的なIRヒーターは限られた波長域の赤外線しか放射できないため、塗料の吸収効率が低くなってしまう。

つまり、サーモリアクターは、塗料のIR吸収特性に対してバランスのとれたIR波長の放射により、優れた熱伝達が分子連動を高めて昇温を促進し、高速乾燥を実現する。熱伝達率は75%と非常に高い数値を示す。

また、塗装乾燥炉で多く使用されている熱風乾燥炉は炉内温度を上げてワークを昇温し塗膜を乾燥させるため、塗膜への熱伝達に時間を要する。

一方で、サーモリアクターは塗膜に対し直接熱を伝えるため、発泡が発生しにくいという特長もある。熱風式とは異なり、炉内で風が舞うことがないため異物が浮遊・付着せずゴミブツになりにくい。塗装品質にも寄与する。

溶剤塗装、水性塗装、粉体塗装と塗装系を選ばず効果を発揮する。同社によると、金属ドラムを溶剤塗装するケースにおいて、熱風循環乾燥炉では35分かかっていたのがサーモリアクターでは4分に短縮するなど大幅な乾燥時間の短縮が可能となる。

近年はカーボンニュートラル達成に向けたCO2対策の気運が大手企業を中心に高まっており、それに伴い同社への引き合いが増えている。サーモリアクターは塗装ライン全体を改修する必要はなく、乾燥炉の改修のみで導入が可能なため、CO2排出量が多い乾燥炉で対策が打てることもユーザーが導入しやすい理由となっている。

大規模塗装工場だけでなく、塗装専業者からも引き合いは多く、省エネ対策や生産性向上、更には乾燥炉の省スペース化といった効果を期待する声が多くなっている。

ヒーターの組み合わせや個別ヒーターの出力調整が可能であり、1つの塗装ラインで高温や低温乾燥に対応できる。ワークのサイズや形状に合わせて最適な乾燥を構築できる。

モバイルヒーター上市予定
補修やパテに最適

新たな展開として、塗装ライン用とは別に可動式のモバイルヒーターの販売を今夏に予定している。

タッチアップやパテ付け、更には乾燥炉に入らない大物被塗物といった用途向けに展開していく。従来自然乾燥していた塗装品を強制乾燥させることで乾燥時間を短縮し生産性向上に寄与できる。この分野では電気ヒーターを用いているケースも見られるが、それよりも速い乾燥が期待できるという。

現在、顧客との実証テスト案件では、従来は自然乾燥で5時間を要していたワークが、電気ヒーターでは1時間、それに対してサーモリアクターのモバイルヒーターでは10分で塗膜が硬化した。

技術サポートの面でも体制整備を進めている。同社では企業連携により、ユーザーがワークを持ち込みテストできるラボ施設が栃木県と福岡県にある。今般新たに愛知県でも利用できるラボ施設ができ、国内3拠点を活用して展開していく。

塗装工場におけるCO2排出量削減や省エネ対策の関心が高まる中、同社ではサーモリアクター導入による高効率での塗装乾燥の実現を積極的に提案し、事業拡大を目指す。



サーモリアクター内部
サーモリアクター内部
装置の外観
装置の外観
ワークに対し最適な乾燥
ワークに対し最適な乾燥

HOME工業用 / 自動車高効率乾燥で省エネ、省スペース実現

ページの先頭へもどる