2030年ビジョン構築へ、デジタル活用で変革目指す

 ボディショップの変革が加速しそうだ。日本自動車車体整備協同組合連合会青年部会は昨年11月28日、第1回オンラインフォーラムを開催した。青年部会の主な事業である2つのプロジェクトの進捗を報告。経営プロジェクトでは、動画技術を活用し、情報共有をよりスピーディに、末端の会員まで届けることを志向する。組織プロジェクトでは日々の作業時間や工賃をデータとして集め、ビッグデータ化することで根拠ある数字を示していく。技術に合わせた適正な料金、作業時間の確保に注力する。


日本自動車車体整備協同組合連合会青年部会は5月に行われた第20回通常総会で新部会長に伊倉大介氏(=写真)が就任した。同会では会員の経営力の底上げと組織増強を最重要課題に挙げている。

伊倉部会長はオンラインフォーラム冒頭のあいさつで「今回はコロナ禍での新たな取り組みとしてオンラインフォーラムを開催した。それぞれが強い当事者意識を持って、明るい未来を自らの手で主体的に創っていく。会員の皆様もこの時間を無駄にしないよう明日からのポジティブなアクションのきっかけにしてほしい。また今回は会員以外にも自動車業界に関わる方にも見てもらっている。我々の技術力を未来の自動車業界に生かすために、今後はさまざまな方と手を取り合い進めていきたい」と述べた。

オンラインフォーラムでは、事業報告として現在活動を進めている経営プロジェクトと組織プロジェクトのメンバーが登壇した。動画やビッグデータ活用などデジタル技術を駆使し、新たな取り組みを行っている。

例えば経営プロジェクトは「未来を見据えた個社の発展」をテーマに、経営に必要な知識を全国の会員へ提供する目的で、ウェブ上で情報を取得できる「オンラインアカデミー」を開設している。経営や人材確保・育成、技術など多様なコンテンツを盛り込んでおり、経営者の知識習得や経営力の底上げを目指す。

既に「会社を守る保険セミナー」「洗車ビジネスを考える」「UV商品セミナー」などこれまで行ってきたセミナーのアーカイブ動画を会員ページにアップしている。「今後も板金塗装の技術やレバレートの計算など更なる動画の充実化を目指し、会員に有益な情報を発信していく」(松本悟プロジェクトリーダー)と説明した。

同会では迅速な情報提供を重要事項に上げる。講師が全国をセミナーで周るのではなく、オンラインで受講できることで会員が一斉に情報を取得できる。セミナーで会員個社の経営力を高めるだけでなく、スピーディな情報提供を心掛ける。

また、個社の発展支援として、2030年を見据えた経営ビジョンの作成をサポートしていく。自社の未来を明確に描き、計画、行動に落とし込み、企業として着実に未来へ歩んでいく仕組みをつくることで、強い会社をつくっていく。

松本氏は「経営ビジョンは会社にマッチしたビジョンがあるため、正解はない。それを1人で作るのは知識や気合が必要。そこで幹事団や事業サポーターなどが協力しモデルケース作成。会社の規模感などを考慮し、いくつかのパターンの経営ビジョンを作成していく」と方針を示した。

もう1つのメイン事業である組織プロジェクトでは持続的な活性化を目的に同部会の「2030年ビジョン」の構築を目指す。

そのための活動として志継承をテーマに青年部会を知るための活動を開始。歴代部会長のインタビューなどで設立から継承してきた思いや核となる部分を掘り下げていく。また、部会長会議をこれまでオンラインで8回開催し、部会長のライングループを作成するなど、情報共有と会員同士の結束力強化策を実施している。

新たな取り組みとしては、ニュースタンダードを構築すべく、ビッグデータの作成に注力していく。板金塗装作業の平均時間や工賃などを明確にし、各地域における1つの目安とするのが目的。経験則でのあいまいな判断ではなく、データに基づいた根拠のある判断や主張ができるように整備していく。同会では会員企業の日々の作業時間のデータを集めることで、保険会社との交渉や顧客への根拠ある料金の提示を可能にしていく考え。デジタル技術を活用することで、会員企業の利益改善にも寄与していく。その他、他団体や研究機関などにもアプローチし、同会の向かうべき方向を探っていく。

その後、スペシャルトークセッションでは伊倉部会長と4代目部会長の神山憲秀氏が「ふざけるな!BPお金24時」と題し対談を行った。その中で神山氏は最低賃金などが上がる中で自研センターが作成している指数対応単価は20年以上変わっていないことを指摘。「保険会社との交渉でも自社のレバレートなど根拠のある数字を示さなければ意味がない」と主張した。

伊倉氏は「今後は会員各社のレバレートなどを可視化することでリアルな単価などを示していきたい。また、特定車種の部位の修理が何分かかるか、組合として標準的な時間の調査も行っていく」と説明した。
 その他、少子高齢化時代における会社経営や協業、イノベーションについて議論した。



伊倉大介氏
伊倉大介氏

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