DIYで豊かな賃貸ライフを!

大阪府下に約1万2,000戸の「DIY可能な賃貸住宅」を供給している大阪府住宅供給公社(以下、公社)。その規模からして"日本一DIYに理解のある大家さん"が、賃貸住宅とDIYの新たな関係性を見出した。入居期間との相関性だ。DIYで自分仕様にカスタマイズした部屋は愛着が湧き、長く住みたくなる実態が明らかになった。入居者に豊かな住まい方を提供し、賃貸住宅の経営にも有効性を示す「DIY可能な賃貸住宅」。公社の取り組みを取材した。


大阪府住宅供給公社は、平成27年から「DIY可能な賃貸住宅」の供給を開始した。現在、公社が管理している約2万1,000戸の賃貸住宅のうち、その半数以上の約1万2,000戸を入居者がDIYできる賃貸住宅「つくろう家(や)」として供給。退去時の原状回復のリスクで「DIY不可」が常識の賃貸市場にあって、異色の取り組みとして注目されている。

DIY可能な賃貸住宅「つくろう家」は、いずれも築40年以上が経過したいわゆる"団地"タイプの住戸が対象。入居者の高齢化など昔ながらの団地に顕在化する問題に対し、「若い方々の入居を促し、団地を活性化させる魅力的なコンテンツとしてDIYを取り入れました」(団地マネジメントグループ副主査・片山祐梨子さん)と説明。築年数の古い団地すべてをDIY可能な賃貸住宅にする大胆な施策を進めている。

「つくろう家」でできるDIYは、主に内装仕上げに関わる部分。壁の塗り替えやクロスの張り替え、クッションフロアやふすまの張り替え、キッチン扉へのシート貼りなど内装の色やデザインをDIYでカスタマイズし、自分らしい部屋づくりを楽しめる。退去時の原状回復が緩和されるので、入居者はその費用を心配することなくDIYが行えるという寸法だ。

DIYを行う際に公社に提出される「DIY届出書」は既に総計2,000件を数え、多くの家庭でDIYが楽しまれていることが分かる。それらDIYを行った入居者に、公社はこのほどアンケートを実施。そのアンケート結果から浮かび上がってきた、賃貸住宅とDIYの関係性が興味深い。

DIY、賃貸経営へのメリット鮮明

DIYを行った入居者へのアンケートで公社が注目したのは、DIYと入居期間の相関性だ。部屋の中をDIYした人は、していない人に比べて入居期間が半年以上長くなるという有意なデータが得られた。「DIYで自分仕様の部屋にしたことで愛着が湧き、より長く住んでいただけるのだと思います」と前出の片山さん。

半年とは言え、入居期間が延びるのは家主側にとっては大きなメリットだ。退去時に発生する原状回復工事や新たな入居者の募集費用が抑えられるため、入居期間の長い部屋が多くなるほど経営効率が高まる。一般的な大家業に例えて言うなら、物件当たりの利回りが良くなるということだ。

更に、「DIY可能な賃貸住宅」が新たな入居者を呼び込んでいることも分かった。同じくアンケートで、入居のきっかけとDIYの関係を訊ねたところ、「決め手になった」が10%、「決め手のひとつになった」が54%と、「DIY可能な賃貸住宅」という条件が6割超もの人に響いていたのだ。部屋探しをしている人たちにとって、「DIYできる部屋」というコンテンツがいかに魅力的に映っているかが分かる。

入居期間の長期化や新たな入居者の獲得などDIYの有効性がアンケートでも裏付けられたことから、公社では新たな展開に乗り出す。公的賃貸住宅で初のDIYレクチャー付き賃貸プラン「つくろう家Basicレクチャー」の通年実施だ。

これは、壁の塗装や壁紙張りなどの本格的なDIYをプロに教えてもらいながら行えるもので、そこに要する費用は公社が負担。入居者は無償でプロと一緒に作業が行え、クオリティの高い仕上がりが得られる。 

この魅力的なプランを、まずは府下の2カ所の団地で通年実施することを決定。「今回のアンケートで、DIYされたお宅は長く住んでいただけることが分かったので、レクチャーに要する費用もそこで回収できます」(片山さん)と経営的な観点でも計算が成り立った。"プロと一緒にDIY"という、賃貸住宅の新たな境地に乗り出す。

ちなみに、今回のアンケートでDIYの実施内容についても訊いたところ(複数回答)、1位は「クギ、ビス打ち」の55%、2位は「リメイクシート貼り」の52%、そして「壁の塗装」が33%で3位に入った。「部屋を設える上で壁の色はインパクトが大きいので、塗装もポピュラーですね」と片山さん。塗料業界にとっても興味深い取り組みだ。

※大阪府住宅供給公社は、記事中の「つくろう家Basicレクチャー」で、講師としてDIY支援業務を受託する事業者を募集している。DIYを指導しながら入居者と一緒に部屋づくりを行う内容で、人件費などの費用は公社が負担。事業者はこの活動を通じて、自社製品の販売や自社のPRなどを行えるとし、DIY支援に関心のある事業者を募集している。募集要項、詳細は公大阪府住宅供給社のホームページより。



DIYした部屋は入居期間が長くなる
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昔ながらの団地をDIYで魅力づけ
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