内装市場創出のダークホース
ニッペホーム「MORUMORU」

家庭用塗料メーカー・ニッペホームプロダクツの"手で塗る塗料"「MORUMORU(モルモル)」で、自宅の部屋の壁を塗る一般消費者が急増している。ユーザーが投稿した施工動画の再生視聴回数は100万回を超え、SNSを通じてファンが加速度的に拡大、『日本人は壁を塗らない』という業界の思い込みも軽く打破した。住宅の内装市場という巨大なマーケットを、意外な塗料がこじ開けそうだ。(P&C Journalインテリアペイント特集2022から)


2019年8月、幕張メッセで開かれた「DIYホームセンターショー」でひと際注目された新商品があった。ニッペホームプロダクツの"手で塗る塗料"「モルモル」だ。その年のDIYショーへの出展で初めて同品をお披露目。"手で塗る塗料"というコンセプトが市場に通じるか不安もあったが、多くのメディアの注目を集め、ヒット商品へのきっかけをつかんだ。

「"塗料"という商材へのハードなイメージと、"手で塗る"という手軽さのギャップ感がメディアの方々に面白く映ったとのだと思います。その後、テレビの情報番組などで何度も取り上げられ、瞬く間に売れ始めました」(同社営業企画部・門脇幸治部長)と、斬新なコンセプトが当たった。

「モルモル」は、水性シリコン樹脂をバインダーに酸化チタンや骨材を練り込んだペースト状の水性塗料。手で塗り付けられるのがセールスポイントで、塗り壁風のオシャレな仕上げをDIYで手軽に楽しめる商材。

商品企画を担当した同社営業企画部商品開発クリエイティブグループの岩切未来さんは、「開発に当たり、いろんな施工道具を試す中で、以外にも手で塗る方法がいちばんうまくいきました。そこで"手で塗る塗料"というコンセプトを立ち上げ、会社に提案。『手で塗る?』みたいな空気も中にはあったかと思いますが、『とにかくやってみよう』ということで社内が一致、GOサインが出ました」と発売に至った経緯を明かす。

そして、お披露目の場として出展したDIYショーでいきなり脚光を浴び、ヒット商品へのきっかけをキャッチ。ほどなく発生したコロナ禍の"巣ごもり消費"も追い風になり販売が急伸、「生産が追いつかないほど」(門脇氏)と、同社も経験したことがないほどの売れ行きを示した。

更に、巣ごもり消費のピークを過ぎても「倍々ゲームで販売が伸びている」(同)のが、モルモルの特筆すべき点。SNSの波に乗り、加速度的にファンが広がっていることが背景にある。

塗料店のB to Cビジネスにマッチ

『ぶきっちょな私でも、こんなに簡単に壁を塗れちゃいます!』と、動画共有サービス「YouTube」で見かけるモルモルの施工動画。一般のDIYユーザーがアップした動画だ。材料を手のひらに乗せておもむろに塗り始め、ほんの十数分で壁の1面を塗り終えてしまう様子は、『えっ、こんなに簡単なの!?』とちょっと衝撃的ですらある。

同じような動画をモルモルのユーザーが続々とYouTubeにアップし、それらの再生視聴回数は100万回を超えたという。自分と同じ塗装の素人が簡単そうに、しかも大胆に部屋をイメージチェンジしている様子が視聴者を刺激し、『自分もできそう!やってみたい!』と新たなユーザーを獲得、ファンが広がっている構図だ。

「インテリアのデコレーションは写真映えするコンテンツでもあるので、インスタグラムでもすごい投稿数になっています。SNSを通じてモルモルが一人歩きを始めている、そんな状況になってきました」(岩切さん)と、塗料商材としては異次元の世界に入った。

ヒットの理由はいうまでもなく、"気軽で手軽で簡単"な点だ。「DIYで壁を塗装する際の最初の難関は道具。適切な刷毛やローラーを選び、バケットなどを揃えるのは一般の人には大仕事で、その面倒をなくしたことでハードルが一気に下がりました。そして、失敗への不安が取り除かれたのも大きなポイント」(門脇氏)と説明。

自分の手で塗るだけなので、道具の使い方を心配しなくてもいい。手のひらで塗る塗料に塗り方の正解はなく、従って失敗もない。どのように塗っても"塗り壁風"に仕上がるので、それなりにオシャレでカッコいい。『失敗するかも』といった不安も、やはり動画や画像、コメントなどSNSの情報で取り除かれ行動を後押し、部屋の壁塗りに挑戦する人を増やした。

「『海外と違って、日本人は(部屋の)壁を塗らない』というのが業界的な通説ですが、それが思い込みに過ぎないことをモルモルが証明したように思います。部屋をオシャレにしたい、カッコよくしたいという願望はやはり普遍的なもので、"気軽に、手軽に、簡単に"実現できる手段があれば行動するということ。特に、部屋の中で大きな面積を占め、雰囲気をガラリと変える壁の塗装だからこそ、その達成感や満足度は高い。モルモルをきっかけに、海外のように部屋の壁を塗るDIY文化が育ち、住宅の内装にペイントが広がれば」(門脇氏)と期待を膨らませる。

モルモルは現在、ホームセンターの店頭に加え、各種のECサイトで販売が急伸している。そこに新たな商流として同社が期待するのが塗料販売店だ。「モルモルはDIYペイントを後押しする上、手離れもいいのでB to Cビジネスを狙っているお店には格好の商材だと思います。当社の『ニッペホームオンライン』で業者様卸価格でのお取引もできますので、ぜひ活用してほしい」と呼び掛けている。



「MORUMORU」のファンが全国に急増中
「MORUMORU」のファンが全国に急増中

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