こんにちは。またお会いしました。今回は沈んじゃ困るというお話です。BYKの添加剤でいうとANTI-TERRAとRHEOBYK(レオビックと読みます)のシリーズです。何に沈んでほしくないかというと、色の素・顔料とECKART(エカルト)などの光輝材です。塗料やインキを置いておけば、容器の中で重いものが沈んでいきます。振ってすぐ戻ればいいのですが、そうもいかないことも多いのが世の中。今夜はこの沈むをドレッシングに例えてお話しします。

香辛料などツブツブがいっぱい入ったドレッシング。銘柄により底に沈んでるものもあれば、あんまり沈んでないものもあります。あるドレッシングは名称に「分離液状ドレッシング」と開き直っています。一方、「ゲル化剤(ペクチン)」「増粘多糖類」と表示しているものもあります。この二つは粘い。値段も違いますが、見た目も違います。残念ながら、塗料で「分離性塗料」と表示したものはありません。将来は知りませんが、分離した塗料は売れません、普通は。何が分離するかというと、色の素・顔料です。分離しないようにすることも、BYKの添加剤の仕事です。人の弱みに付け込む悪い奴らと考えるか、いやいやみんなハッピーになれるでしょうと考えるかはお任せします。

ドレッシングでは食べられる材料で構成されていますが、塗料・インキではその必要はありません。もちろん安全性は考慮されています、ご安心を、でも食べないでね。ANTI-TERRAとつくシリーズですが、ANTIはわかりますよね、xxに反対する「抗する」です。TERRAは地球です。壮大でしょうこの添加剤、地球に抗するのですから。といっても重力に抗して沈むのを抑えるという意味です。エカルトの商品、アルミフレーク。形はペラペラのコーンフレークみたい、実際コーンフレークタイプと読んでいます。もうちょっと高級なのはシルバーダラー(一ドル銀貨)と呼びます。ウソではありません。さてなにせこのフレークはアルミという金属でできているので、塗料中では沈みます。沈まないようにするのがRHEOBYKのシリーズ。これなくしてアルミフレークは塗料に加えてもらえません。

粘度についてしゃべらないと

ところでRHEOYKの由来について説明していませんでした。RHEOはRHEOLOGY(レオロジーと読みます)、これはなかなか難しい学問です。理系でも40年前は大学の学部ではなく、大学院ででてきたように記憶しています。数式ばかりでちっともわかりませんでした。まあ早い話が粘り気の科学です(本当は変形とか流動なんですが)。蜂蜜のねばさと歯磨きのねばさはどう違うか?豆腐は固体か?プリンは粘弾性体だ、ゼリーもそうだ、などとわざわざ身近なものを、普通の人にはわけのわからない「粘弾性・チキソトロピー・擬塑性」などという言葉で表現しています。

で、沈むのを抑えるだけじゃないことを言おうとして、お話ししているのですが本題にたどり着きません。ごめんなさい、がんばります。ねばければ物が動きにくい、沈むのに時間がかかると理解してください。厳密には違うのですが、細かいこと言うと大学の講義になってしまいます。

もう一つ、塗った後の形を整えるのもRHEOBYKのお仕事です。壁に塗料を塗ったはいいけど、上から垂れてきちゃった、では困ります。塗るときは滑らかに、塗った後はぴたりと止まるように作ってあるのが塗料です。さらに塗ったら、きれいに肌が伸びないといけない(わからん表現ですねこれは)。刷毛で塗ったとき刷毛にそって凹凸・筋目が出るようじゃいかん、という意味です。アラジンに出てくる魔法のランプ・魔人ジーニーなら、全部一切合切ご主人様のお気に召すようにしてみせます、となるのですが、人のすることには限界があります。あちらを立てればことらが立たず。一体全体、すべての項目が全部百点になるのかえ!そうです、このバランスをとろうと、塗料・インキ会社の方は、シンナー組成を考え、添加剤も組み合わせておられるのです。

さて、本日はこれくらいにして、次のお話は第四回にまかせましょう。

下はみんなプルンプルンする食べ物

片栗粉は液体でもないし、固体でもないように思えるし、ゼリーではミカンが容器の底に沈んでないのがミソ。お豆腐は固体に見えます。どれも、中に「網の目」が張られていてプルンプルンをもたらしている点では同じなんです。

        片栗粉の水溶きを湯煎         ゼリー         お豆腐

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ビックケミー・ジャパン株式会社 若原章博