今回は泡の話です。泡を消す消泡剤がBYK-0xx、BYK-16xx、BYK-17xxの製品です。BYKの読み方ですが、製品名ではビーワイケー何番と読みます。DISPERBYKではディスパービックと読みました。会社名はビックです。

泡のお話は実は大好きです。シャボン玉そのものを考えればいいのです。なお泡と塗料の関係ですが、泡が残ったら、塗った塗膜が穴だらけで困るでしょう、とお考え下さい。単純な話です。それだけじゃ面白くないので、泡の話を続けさせてください。シャボン玉は古くから研究されてきました。かのニュートン大先生も研究者です。紹介したいのはアグネス・ポッケルスさん(Agnes Pockels:ドイツ女性)女学校を出た後、主婦として両親と弟の世話をしながら家事に追われていました。で台所の洗い物の際に、きれいな水と油で汚れた水の表面の違いに興味を持ち、いろいろ実験。レイリーという著名な先生にその結果をお手紙で送り、先生は「ネイチャー」に手紙を英訳して掲載、その表題が「表面張力」。1891年のことです。日本でいうと明治24年、濃尾震災の年。もう一つついでに、1891年はキュリー夫人がソルボンヌ大学で学ぶため、パリに移り住んだ年だそうです。かたや一介の主婦、かたや名門大学の学生、因縁めいてるわね。

アグネスさんの実験方法は、家にある道具を用いながら、それまでにない画期的な方法で、いまもアイデアと研究成果は生きています。BYK尼崎のラボにある表面張力の測定器も、全く同じ原理・仕組みを用いています。その後も実験を続け、一時期家事や介護で実験ができなかったのですが、40年後の1932年に大学から名誉博士の称号をもらっています。このとき70歳。アグネスさん、尊敬します。

消泡剤に戻します

アグネスさんから離れて、消泡剤の話に戻ります。塗料やインキに泡が残っていると、そこだけ穴になってしまいます。穴があると入りたいのは、恥ずかしい時だけで十分。戻します。例えば自動車の塗装面に穴があると、そこから水と空気が入り、下の鉄板が錆びていきます。自動車の塗装の厚みはご存じですか。100μm(ミクロン)、あらまたいやな表現が出てきた。0.1mmです(1mを6回十で割って100かける)。これじゃわかりにくいので、家のプリンター用紙の束を1cmの厚みで何枚あるか数えてみました。ちょうど100枚。ということは10枚で1mmとなり、0.1㎜がプリンター用紙一枚。自動車は紙一枚分の塗料でラッピングされているわけです。感動しません? 紙一枚で10年以上錆びも出さないなんて。塗料メーカーさんごりっぱ。ここに紙一枚の薄さに、そりゃ穴が空いてたらまずいよね。こうならないように泡を消す、消泡剤の出番となるわけです。

アグネスさんの話の出典は「シャボン玉 その黒い膜の秘密」立花太郎著、中央公論社 自然選書 昭和50年初版、昭和54年4版です。

ところで、炭酸水の泡はすぐ消える、コーラの泡も早ように消える。シャンパンの泡もすぐ消える。でもビールの泡はなかなか消えない。なんで?  これを語るともう一晩必要になるので、とりあえず次の写真を見てお休みください。シャボン玉が消えていく途中、色がどんどん変わるのよ。明るく七色に変化して、最後は黒くなってパチンと。この泡の厚みが10-20nm、だめおしでした。

画像1.jpg

        ↓

画像2.jpg

        ↓

画像3.jpg

        ↓

画像5.jpg

割れた

ビックケミー・ジャパン株式会社 若原章博