今回は表面調整剤についてお話しします。BYKでは有機変性ポリシロキサンBYK-3xx、BYK-3yyyです。カタログや添加剤一覧表にはシリコン系添加剤と書いてます。本当はシリコンとシリコーンはちょっと違います。シリコン(珪素)を元にしてシリコーンができているとお考え下さい。そのシリコーンですが、タッパーのふた、お風呂のシーリング材など割と身近にありますが、実はとっても変な材料です。今日はは想像力をフル回転させてお聞きください。

人間も動植物もみーんな有機物、つまり炭素でできています。もし地球に、海底の硫化水素が噴き出すような場所で繁殖するバクテリアが生まれず、宇宙から有機物の素が降ってもこず、有機物・生命が生まれなかったらという仮定です。そしたらシリコンでできた生物が生まれていたかもしれません。地表にはシリコン元素が酸素に次いで二番目に多いのです。そして、シリコンは炭素のように、長い長―い鎖(高分子と言います)を作ります。ひょっとしたらシリコンのDNAもできていたかもしれません。活動するためのエネルギーは、半導体にもなるシリコンの特性を生かして、太陽からの光を電気に変えて使います。ターミネーターに出てくる悪役のような、銀色に光る肉体かもしれません。

ここにもう一つ「もし」を加えて、人間とこのシリコン生物が出会ったらと考えましょう、お互い共通点を認め合いつつ(知能が十分高いのも前提)も、お互いには交われないと理解するでしょう。できている素が違うからです。それぞれ社会ができて隣には存在するが、一緒にはならない。でも構成している元素が異なるので、互いの利益・不利益がかぶらず、喧嘩にも戦争にはなりません。ただ一つ懸念されるのは、互いに酸素が共通なこと。シリコン生物には酸素が取り込まれ、人類も酸素を燃やしてエネルギーとしています。この酸素の取り合いあるいは押し付け合いにさえならなければ、共存できると思います。たぶんDNAの交換はありません。雑学ですが、ネアンデルタール人のDNAがヒトの中に2.2%ほど入っているとのことです。これもすごいですね。ネアンデルタール人とヒトは交配したようですが、シリコン生物と有機物人類では交わらないでしょう。

何が言いたいか見えてきませんね。シリコン系表面調整剤は有機物である塗料やインキの中では混ざらない、そういう世界でシリコン系表面調整剤は生きている。塗膜の上に浮いて独自に役割を果たすということです。えらい周り道でした。

表面調整剤にすすみます

さて役割ですが、その機能は「スリップ」「ハジキ防止」とまるで警察のポスター用語、さらに「濡れ性」「レベリング」と続きます。これらはすべて表層の話です。スリップするのは表面ですよね。レベリングさせるならレベリング剤でいいではないと思われるでしょう、その通りです。フロー調整剤というのもあります。機能を厳密に定義するのは結構面倒くさいのでこの辺にしておきます。定義を議論するのはいいのですが、それで何もかもがわかるわけではありません。定義や本質の議論を避けるのは「皮相な考えだ」と指摘される時があります。でもおよそ添加剤では、0.1mm紙一枚、その上の皮一枚・表層の問題が、本質的なのです。皮一枚に生きる添加剤人生に光を。

また脱線しました。表面調整剤は膜の上のほうに浮いて、表面で働きます。先のシリコン生物に例えると有機物とは交わらず、有機物の表面に分かれて住み着きます。シリコン生物本人はきれい好きなので、水も油もはじきます。バレリーナのようにくるくる回ることも好きで、汚れや傷をつけるモノが触ってきても、くるっと回って滑らせ、触れさせないようにします。きれい好きは徹底していて、お肌もすべすべ、でこぼこも全くありません。こんな性格は有機物にはありません。塗料・インキも有機物でした。シリコン生命体もどきであるBYKの表面調整剤がご理解いただけましたか。

想像力の最後に写真を載せます。ドイツのBYK本社から車で1時間ちょっとのところにあるネアンデルタール渓谷、あのネアンデルタール人が発掘されたところのモニュメントです。

石でできた脳!すばらしい。

いやいや、自分たちは昔から石頭だったというジョーク?

それともシリコン生命体(石はSiO2などでできており、シリコンの素です)を予言? なお、立っているのはヒトです。

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ビックケミー・ジャパン株式会社 若原章博