ニュージーランドツアー2019 粉体塗料の動向を探る
建設業の活発化で堅調

日本パウダーコーティング協同組合は11月25日~30日までの6日間、ニュージーランドの粉体塗装関連企業の視察ツアーを開催した。塗装専業者、販売店、塗料メーカーなど20名が参加し、現地の塗料メーカーや粉体塗装ラインを視察した。今回は、オークランドに拠点を構える粉体塗料メーカーのDGL International社(以下DGL)をレポートする。


ニュージーランドは北と南の主要な島があり、今回訪れたオークランドは北島に位置する経済の中心地。人口は170万人でそのうちの40%が移民という多文化の地域となっている。

オークランド市内は現在、インフラ整備やビル建設が旺盛で、3年前からは本格的に地下鉄工事が行われていたり、あちこちにビルの建設工事も見られたりする。移民政策により人口増が続いているため、オークランド郊外には大規模な住宅区域が整備されるなど新築住宅の需要も増えている。

ニュージーランドの主要産業は第1次産品であり、乳製品、肉類、木材・木製品、果実類、羊毛類などを輸出している。一方で、機械類や自動車など工業製品は輸入に頼る部分が多いため、工業塗装需要という観点でみると、建設業に関わる分野が多くを占める。

建材向け70%
HAA型ポリエステル樹脂系が主流

DGLはオーストラリア・Duluxグループの一部門として事業展開してきた中で、今年8月には日本ペイントホールディングスのDulux買収により、日本ペイントホールディングスグループとなっている。

DGLは塗料メーカーとして、ANZ(オーストラリア、ニュージーランド)市場及び東南アジアで35年以上にわたって粉体塗料を製造、販売している。

ANZ市場では粉体塗料のトップメーカーで、オークランドとメルボルン(オーストラリア)に製造拠点を持つ。生産能力はオーストラリアが7,000~8,000トン/年、ニュージーランドが4,000~5,000トン/年の合計12,000トンを持つ。その他に中国の東莞に合弁の製造拠点も有している。

ニュージーランドの粉体塗料マーケットシェア(2018年)は、DGL77%、アクゾノーベル16%、PPG6%、その他1%とDGLが圧倒的な地位にある。PPGは製造拠点を有するが、アクゾノーベルはニュージーランドに工場はない。なお、ANZ市場となると、DGLは40%という。

同社の直近の販売数量は年間約3,000トンで、販売先セグメントはアルミサッシやパネルなど建材関係が70%を占める。先に述べたように、機械産業が盛んでないニュージーランドでは、工業塗装需要としては建設業に依存する部分が強いとみられ、粉体マーケットで抜きん出た同社のセグメントがそのまま市場全体の動向と見ることもできる。

建材向けではポリエステル樹脂系粉体塗料をメインに展開しており、ふっ素樹脂系もラインアップに持つ。ポリエステル樹脂系の硬化タイプは日本で主流のウレタンタイプではなくHAAタイプとなっている。環境配慮の観点からTGICタイプは扱っていない。

耐候性グレードとしては、10年保証の「DURALLOY」、20年保証の「DURATEC」、30年保証の「FLUOROSET」をラインアップする他、デザイン性に優れた「ELECTRO」シリーズも展開している。

50kg、60kgオーダーにも対応
ボンディング装置も完備

オークランドのDGLの従業員数は50名で、そのうち製造工場では15名が働いている。

製造装置は、大型バッチ(2,000~1万5,000kg)3基、中型バッチ(200~1,500kg)1基、小型バッチ(50~200kg)2基に加えて、ボンディングプラント2基を有する。平均バッチサイズは843kg。なお、ボンディングプラントはオーストラリアの拠点にはなくこの工場に集約している。

R&Dや調色用のラボ押し出し機を複数揃えており、ボンディング専用のラボ装置も持つ。

バッチサイズを複数持つことで柔軟な受注体制を敷いており、50kgや60kgといった小ロットオーダーも頻繁にある。例えば視察時のあるバッチは週に18色の生産を予定していた。

品質管理に関する試験機などは一通り完備している。レーザーによる粒子サイズ分析装置、カラーコンピューター、光沢計、QUV促進耐候試験機、中性塩水噴霧試験機、酸性塩水噴霧試験機、示差走査熱量計(DSC)など、さまざまな特性についてのテスト機器を揃えている。なお、メルボルンのR&D兼テクニカルセンターとも連携を取り補完関係にある。

また、今回の視察では高耐候性ポリエステル樹脂系粉体塗料「DURATEC」が採用されているASB本部(銀行)を訪れた。

粉体塗料はASBの建物のルーバーのような日差し除けのアルミ外装材に採用されている。この建物は2013年に建てられており6年が経過しているのだが、すぐ近くに海がありニュージーランドの強い紫外線にさらされるという厳しい立地環境にもかかわらず色ムラなど劣化具合は見られない。

この建物では年に2回の水洗いが行われており、塩分や汚れを落とす。その効果もあって、ゴールド、シルバー、ブロンズカラーデザインで存在感を示していた。



市内の様子
市内の様子
オークランド市内は建設が旺盛
オークランド市内は建設が旺盛
粉体塗料工場
粉体塗料工場
国際ビジネス開発マネージャー・トニー氏
国際ビジネス開発マネージャー・トニー氏
ASB本部(銀行)の外装材に採用
ASB本部(銀行)の外装材に採用
ゴールド、シルバー、ブロンズのデザイン性に優れた多彩カラー
ゴールド、シルバー、ブロンズのデザイン性に優れた多彩カラー
 塩害・強い紫外線でも優れた耐候性
塩害・強い紫外線でも優れた耐候性

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