コロナ禍の塗料需要、自動車新車のマイナス大きく

コロナ禍での需要分野別の状況が明らかになってきた。日本塗料工業会、日本塗料商業組合、日本塗装工業会の製販装3団体は8月24日、「塗料・塗装最新動向セミナー」をオンラインで開催した。塗料出荷を始め、塗料製造業実態調査(2020年度事業年度分)から分野別の動向などを解説。新型コロナ禍の影響を数値の面から明らかにした。また、日本塗料商業組合や日本塗装工業会からは、最新の活動内容が報告された。


需要動向について解説
日本塗料工業会

日本塗料工業会の原川浩美専務理事は「日本と世界の塗料需要動向」をテーマに講演。最初に国内の経済動向としてGDP成長率について触れた。2021年の世界の平均GDP成長率-3.3%に対し、日本は-4.6%と平均以上の落ち込みとなった。また主要国の2021年のGDP成長率は1.7%と回復傾向にあるものの、「前年比であることを考えればコロナ前に戻ったとは言えない。今年は原油高、円安、ロシアのウクライナ侵攻の影響がどの程度あるかが未知数で予断を許さない状況」と言及した。

2021年の塗料出荷数量(販売ベース)は前年比102.2%の159万5,550トン、出荷金額は105.8%の6,579億5,900万円となった。「出荷数量に対し、出荷金額の回復が大きいのは製品値上げの影響が大きい」と説明した。

次に塗料製造業実態調査(2020年度事業年度分)から各分野の動向を解説した。分野別にみると2020年はコロナ禍の影響を受け、数量ベースで-8.6%、金額ベースで-10.2%となった。

区分別で見ると、自動車新車が数量ベースで-14.0%、金額ベースで-19.8%と大きな落ち込みとなった。自動車の生産台数減少が大きく影響した。建築分野は数量ベースで-9.8%、金額ベースで-9.9%の減少。船舶・構造物分野は数量ベースで-8.1%、金額ベースで-6.8%となった。

原川氏は工業用や建築用の事業分野について説明をした後、自動車分野での塗料の水性化についてピックアップ。2003年と2020年の水性比率を示した。自動車新車での水性比率は2003年に44.1%だったが、2020年は61.9%と上昇している。一方で自動車補修用では2003年に3.3%、2020年は7%と相対的に水性化が進んでいない状況を示した。自動車補修分野でも水性塗料が注目される一方で、投資コストなどから躊躇するボディショップも多いことが原因とみられる。原川氏は「今後の技術開発に期待したい」とした。

マイスター制度、塗料ナビの進捗報告
日本塗料商業組合

日本塗料商業組合の澤野英樹専務理事は「塗料販売業の現況と今後の市場展開について」と題し講演。澤野氏は初めに同組合の組合員数について触れ、その推移を説明。平成4年の2,447社をピークに減少を続け、令和4年4月現在では1,273社とピーク時のおよそ半分となっている。「ここ数年は倒産や廃業などによる脱退も増えている」と厳しい状況を示した。続いて取り扱い分野では建築用をメイン分野としている販売店が52.5%となっている。次いで工業用18.4%、自補修12.1%となった。

同組合の活動報告では、組合独自の認定資格制度である塗料マイスター制度について報告。現在、塗料マイスタープロジェクトを新設し制度の設計を急ぐ。また、かつて発刊していた塗料商品名集に代わるツールとして進めている塗料ナビ(仮称)についても報告。ウェブを活用した代替品や同等品などの商品検索をはじめ、メーカーへの情報フィードバック機能などで製品改良につなげられる機能も検討している。「将来的には塗料マイスターの学習者のサポートツールにもできれば」と今後の塗料ナビの活用について説明した。

特定技能の受け入れに備える
日本塗装工業会

日本塗装工業会の村木克彦専務理事は「建築塗装の現状と今後の取り組み」をテーマに講演。同会では今年から基本方針や重点施策を一部改訂したことを報告。脱炭素化の推進や持続可能な環境づくり、デジタルトランスフォーメーション、女性活躍の推進などに取り組んでいく方針を冒頭で示した。

続いて、昨年度の完成工事高を発表。令和3年度の完成工事高は2.9%減の8,671億円となった。「住人のコロナへの警戒心など、特に改修工事が影響を受けた」(村木氏)と説明した。

一方、技能者の減少にも触れた。現在日塗装の技能者は29歳以下が全体の18%、55歳以上の技能者が25%と高齢化が進んでいる。

そこで同会が進めているのが特定技能外国人の受け入れ。この制度は国内での人材確保が困難な産業分野で、一定の専門性や技能を有する外国人を受け入れることが目的。建設分野では、左官、建築大工、とびなど19区分が認定されている。日塗装では、国に対して、塗装職種の追加認定を申請している。今年国土交通省から業務区分の再編の提案があり、土木、建築、ライフライン・設備の3つの区分に変更予定。村木氏は「受入準備検討委員会を新たに設置し、外国人の円滑な受け入れの準備を行っている」としている。



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